未来

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネスの未来のレビュー・感想・評価

3.9
誰でも楽しめるいつも通りのMCU映画でありながら、サム・ライミの作風がうまく落とし込まれていて見応えがあった。

ドクター・ストレンジの続編として一作目のキャラクターを掘り下げつつもMCU映画として他作品とのクロスオーバーやMCUフェーズ4の売りである「マルチバース」をうまく扱っていてストーリーや脚本はとてもよかった。また最近のMCU映画は扱う題材や世界観の巨大化などにより上映時間がとても長くなりがちだがこの映画は2時間で無駄なシーンもほとんどなく見やかった。

このような魔法や魔術などの超常現象や、人々が理解しずらい未知なものを描く映画は十分な説明がされないまま進んでしまったり非論理的な展開になってしまい観客を置いてきぼりにしてしまうことが多いが、この映画は常に何が起こっているのかが視覚的に分かりやすくキャラクターの言動も合理的なため理解がしやすいほうではあった。

今作はストレンジの内面的成長を「自分は幸せか」というテーマで描いているが、これがこの映画の微妙な部分な気がした。今回のストーリーによってストレンジの立場や状況が序盤と終盤で大きく違うようなことはならないし、もともと合理的な考えをするキャラクターではあったのでキャラクターの成長を描くのは難しいとは思う。またドクター・ストレンジ自体アベンジャーズIWやスパイダーマンNWHなどの他作品に出演しているストレンジのキャラクター性や描かれ方が成熟しきっているのも難しい要因であると思う。

サム・ライミが今作の監督ということで数年前から楽しみにしてきたが、その点では少しがっかりした。実際この映画には他のMCU映画では見られないカメラワークや演出、ホラー要素などはあったが全体的に物足りなさを感じた。また今作はディズニー映画としては意外でありながらグロ目な表現が多々あった。しかしこれも微妙でR指定無しで公開するためには仕方ないことだとは思うのだが、グロい場面を具体的に映すことがないためとても安っぽく見えてしまいこんな風になるのだったら元々なくていいと思った。できればR指定でもっと怖くてグロい映画にして欲しかった。

この映画の見どころの一つとしてとしてマーベルファンへのサプライズ要素があり、自分は小さい頃好きだったキャラクターがまた映画館で見ることができ興奮したが、同時にそこがこの映画冷める部分の一つになってしまった。予告にもある通り「イルミナティ」が今作で登場し、そのメンバーがサプライズ要素の多いものになっていたが全体的にそのキャラクターの扱いが酷くずっと楽しみにしていたファンとしては少し腹が立った。前提としてこの間のスパイダーマンNWHのサプライズ要素が成功した理由として、キャラクターの人気や期待度だけでなくただのゲストキャラクターとして終わらせなかったことが要因であると思う。NWHではゲストキャラクターがきちんとメインのストーリーに関わってくるし、主人公を導くという重要な役目も持っていたためうまく映画にハマっていた。登場する理屈もシナリオとして無理のないものになっていたのも大きかった。しかし、今作のゲストキャラクターは本当にゲスト出演でしかなくストーリー的にも出てこなくても問題なかったし、無理やり登場させようとしている感じが見え見えだった。自分は今回のキャラクターたちが昔から好きだったしその映画シリーズもリアルタイムで追ってたほど好きだったため、満を辞してMCUに登場させるときにはきちんとした物語や役割を与えてほしいと思っていた。そのため今回の扱いには不満を持った。最近MCU映画を見始めたり、MCU映画以外のマーベル映画を見たことがないにわかの方々は楽しめると思う。しかし今回はファンのためという意味もあるとは思うが、ディズニーが力を示すためのアピールとしての側面が強いと思った。もともと20世紀フォックスが映画化の権利を持っていたキャラクターを二体も出してきて、ディズニーがなんでもできるよと言っている感じが否めなかった。

あと気になったのが、色んな種類のマルチバースが出てくるわけではないという所。ストレンジはいくつかの世界を移動するけどその数は片手で数えられる程度。考えられないような変わった世界を旅する感じかと思っていたが、舞台となる世界は基本的に元(アース616)の世界とあまり見た目は変わっていなく、多次元を体感できるのは移動している数秒間のシーンだけだったのが少し残念。

結果としてみたらすごくいい脚本や演出の映画だと思ったし、CGIや衣装、セットなどの作り込みもすごく美しい映像だった。俳優の演技の素晴らしくとても面白い映画だった。

あとブルースキャンベルがよかった。
未来

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