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ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネスのpenのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

幾つもの世界を知ることはその世界ごとにいる自分を知ることでもあり、それは同時に自分の本質を知る体験になるのかもしれない。

本作には今までのドクター・ストレンジの他に別世界のストレンジが登場するが、そのどれもが、同じ世界で彼と面識がある人からの評判が悪い。そしてその評判の悪さからくる影響は私たちがよく知るストレンジにまで波及するが、そのストレンジ自身も「自分はそんな人間ではない」と強く反論出来ない。彼自身、何かのきっかけさえあれば、別世界の自分同様の行動を取ってしまう弱さを抱えているからだ(そしてそれを感じさせる、ストレンジ演じるカンバーバッチの微細な表情の変化)。
その弱さに向き合い、受け入れていくまでを本作は描いていると思うのだが、それをアクションとして見せる為に別の自分との戦い(自分の負の側面と向かい合う)、骸となったもう一人の自分に意識を移す(過ちを犯したもう一人の自分と一体化し、一つになる)など、ハチャメチャにやっていたのは楽しい。

また、ストレンジとタッグを組むアメリカ・チャベスが、望まざる力をギフトとして受け入れ成長していく物語としても良かった。

一方でワンダ(恐らく本作ではスカーレット・ウィッチとした方が良いのか)に関しては、ダークホールドに囚われている姿が長かった為か、少し描写が足りなかった気がする。最後の子どもたちに恐れられた時の戸惑い、別世界のワンダとの邂逅で見せるエリザベス・オルセン個人の演技によって、だいぶ助けられているような。
サム・ライミ監督のインタビューを読んだところ、本作製作当時はまだ「ワンダヴィジョン」が脚本の状態で、ちゃんとした映像としての完成形ではなかったらしく、脚本から読み取ってシナリオを作ったようだ。完成版を見ていたらまたもう少し異なるアプローチが出来たのかどうか。たらればになるので分からない。
アクション面は別世界の色んなヒーローに対して容赦ないので素晴らしい(と同時にちょっと哀しい。久しぶりだったり驚きがあったから……)。

冒頭のニューヨークでのヒーローとしての戦闘を描いた一連のシークエンスが心地よい。観ていてスパイダーマン一作目(グリーンゴブリン初登場、MJが建物から落ちそうになるあたり)を思い出した。
またライミ監督の新作が観たくなった。

MCUは拡大し続けているが、最近はその作品を任された監督が個性を発揮出来てるのか、出来ていたらどんな風になっているのかを観ることがモチベーションになっている気がする。その意味では本作は良かった。そういった諸々を気にせず楽しめるのはソーの新作か、GOTGか、新ヒーローオリジンか。
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