サマセット7

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネスのサマセット7のレビュー・感想・評価

4.2
MCU28番目の劇場公開作品。ドクター・ストレンジ単独主演作としては2作目。
監督は「死霊のはらわた」「スパイダーマン」のサム・ライミ。
主演は「イミテーション・ゲーム」「パワーオブザドッグ」のベネディクト・カンバーバッチ。

[あらすじ]
魔術師にしてスーパーヒーロー、ドクター・ストレンジ(カンバーバッチ)は、異空間で少女と魔物に追われる夢を見た翌日、かつての恋人クリスティーン(レイチェル・マクアダムス)の結婚式に参列し、ほろ苦い思いを味わっていた。
そんな中、街中に突如怪物と、夢で見た不思議な能力を有する少女アメリカ・チャベス(ソーチー・ゴメス)が出現。
ストレンジは駆けつけた「至高の魔術師」ウォン(ベネディクト・ウォン)と共に事態を収拾させるが、それはマルチバース(多元宇宙)を巡る逃走劇の始まりに過ぎなかった…。

[情報]
マーベル・スタジオによる超巨大プロジェクト、マーベル・シネマティック・ユニバースの28本目の劇場公開作品。
ドクター・ストレンジを主人公とする作品としては、「ドクター・ストレンジ」の続編にあたる。

当初、「ドクター・ストレンジ」の監督スコット・デリクセンが監督を務める予定であったが、脚本製作段階で降板。
後釜に、「スパイダーマン」3部作の監督として知られるサム・ライミが監督となった。

サム・ライミと言えば、監督作の「死霊のはらわた」シリーズで知られるB級ホラー風味が持ち味。
今作でもその作風は健在である。

今作のキャストには、「ドクター・ストレンジ」のカンバーバッチ、マクアダムス、ウォン、モルド役を務めたキウェテル・イジョフォーらが再度集結している。
加えて、MCU常連のワンダ・マキシモフをこれまで通り、エリザベス・オルセンが演じる。

MCUフェーズ4には、ディズニープラス配信のドラマシリーズが加わり、現在までに5本を数える。
今作には、ワンダが主人公となるドラマシリーズ「ワンダビジョン」の顛末が大きく関わっており、事前に視聴しておくと、ワンダ関連のストーリーラインが理解しやすいと思われる。

劇場公開後3日目に視聴したため、興行成績は不明。
現時点での評価は、特に批評家において分かれているようである。

[見どころ]
超巨大プロジェクトをモノともせず、縦横無尽にやりたいことをやるサム・ライミ!!!
どのシーンも娯楽映画(B 級ホラー風味×魔法ファンタジー)の悦楽に満ちている!!
至高のエンタメ体験!!!

[感想]
ネタバレに気をつけると感想がいいにくいタイプの作品である。
とはいえ、ざっくり言うと、とても面白い映画!!!!であった。

正直、そのキャラクター描写はどうなの?とか、このシーンは絶対欲しかった!とか、シリーズファンとして、言いたいことも色々ある。
特に先行作品などから一部キャラクターに思い入れのある人は、不満を抱く可能性が高いのではないか。
色々な意味で好き嫌いの分かれる作品のような気がする。
しかし、鑑賞中は、そんな批判も頭に浮かばせないほどの、サム・ライミ色。

そう。今作は、これまでのMCUの統制されたクオリティ・コントロールからは逸脱した、監督の個性が全面展開された作品である。

そして、その結果、次から次と、突き抜けた面白いシーンの連続!!!
予測のつかない展開!!!
B級ホラーを彷彿とさせる演出!!!
まさにマッドネス!!!

強く印象に残る楽しいシーンが満載されている。
音符!
ゾンビ!!
シリーズ最強クラスの敵!!!!!

たしかに、ドクター・ストレンジというキャラクターは、他のMCUキャラクターと比べて、何でもアリ感が強いキャラクターである。
また、マルチバース、というタイトルにもなっている多元宇宙設定もまた、なんでもアリの展開に拍車をかける。
そして、サム・ライミ。
これらがかけ合わさって、MCUにあって、突き抜けた、抱腹絶倒の、独自の作品が現出した。

新キャラ、アメリカ・チャベスもとても良かった。
今後の活躍にも期待したい。

[テーマ考]
サム・ライミの映画に対して、テーマとか面倒くさいことを言うのもどうかと思う。
このシーン最高!!!!の積み重ねが全て。
それでいいのではないか。

とはいえ、あえて言うなら、スーパーヒーローの倫理を問う話、とは言えるかもしれない。
大を助けるため、小を殺す、というのは、是か否か。
逆はどうか?
その小が、判断者にとって、他の何ものにも増して大切なものならどうか?
ヒーローの選択としては、いずれが正しいのか?
あるいは、他の選択肢はないだろうか?
こういった葛藤が、テーマとして見出せるかもしれない。
冒頭と終盤において、対になったやりとりがあるが、象徴的であろう。

この観点で見た時、今作において、ヒーローは誰か?
多数を救いつつ、最後まで少数を見捨てなかったのは誰か?
第三の選択肢を具体的に提示したのは、誰だったか?
そして、ヒーローとは?ヴィランとは、何なのか?
マルチバース設定が、同一キャラクターの「異なる可能性」を描くが故に、こうしたテーマが浮き彫りになる…のかもしれない。

[まとめ]
MCUの中でも、突き抜けて監督の個性が発揮された、楽しさ満点の異色作。
改めて、サム・ライミ、良いな。
他の監督作も観ていきたい。