茶碗むしと世界地図

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネスの茶碗むしと世界地図のレビュー・感想・評価

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 マーベルコミックのキャラクター「ドクター・ストレンジ」が主役のマーベル・シネマティック・ユニバースの28作目である。

 久しぶりにMCUを見たのだが(『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』から見ていない)、相変わらずアクションもVFXも盛りだくさんで、楽しめる作品ではある。しかも監督はサム・ライミなのでホラー要素も取り込まれていて、けっこうワクワクした。ジャンル映画の作家をヒーロー超大作の監督に起用するMCUの大胆さは相変わらずだ。

 ただ、いつ見てもドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)は何ができて何ができないのかがあんまりはっきりしていないヒーローなので、個人的に好きになれないところがあるなと思った。それと、今作はマルチバースが重要な要素でストレンジたちが飛ばされてしまうユニバースは世界のルールがまったく違うという設定があるにも関わらず、話が進むにつれて元いた世界とそんなに変わんないね……みたいな感じになっているのは気になった。もっと独自のルールにストレンジが縛られたり、逆に利用したりしてすればいいのではと思った。

 また、今作はアクションが多すぎるせいで、ストレンジの葛藤構造がうまく機能していない印象を受ける。アメリカ(ソーチー・ゴメス)との信頼関係の構築とクリスティーン(レイチェル・マクアダムス)への未練という2つの論点がドタバタの連続できちんと掘り下げられておらず、終盤の展開は勢いでおすような感じでどうもしっくりこなかった。また、これは低レベルツッコミだが、物語のキーとなるアメリカがワンダ(エリザベス・オルセン)の手に落ちて大ピンチだというのにストレンジがシニスター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)と音符を使ったお洒落バトルに興じているのにはいくらなんでもアホみたいとか思ってしまった。