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黒い司法 0%からの奇跡のjamのレビュー・感想・評価

黒い司法 0%からの奇跡(2019年製作の映画)
4.3
絶望は正義の敵だ
希望があれば前へ進める


「アラバマ物語」を恥ずかしながら知らなくて
このドキュメンタリーのような映画の舞台、
モンロービルの人々が誇らしげに語るそのストーリー
白人弁護士が無実の黒人容疑者の弁護をする…
調べると、結局は黒人は射殺されて、逆転無罪のような結末ではなかった…
つまりは、悲しいけれども。
どうやっても黒人を罪人にしたいという土地柄


その地で冤罪に苦しむ人々の力になりたいと、
北部からやって来た新人弁護士のブライアン
刑務所でひとりひとりに面会し、寄り添っていこうという覚悟に服役囚たちも心動かされて

そのなかで、
はじめは諦めを色濃く見せていたジョニーD
ブライアンと同い年、聴いてきた音楽も同じ…依頼人と仲良くなりすぎては…という慣習にも逆らって


ジョニーDの冤罪を晴らす
数々の本来有効な証言は黒人のもの
白人の囚人と取り引きして言わせた嘘の証言により死刑囚となる
白人の保安官、検事、陪審員
根深い差別の因習がブライアンに立ちはだかる


同じく黒人死刑囚ハーブの死刑執行
彼に語りかけるジョニーD

深呼吸で落ち着こう
お前は外へ 新鮮な空気を吸う
あの松の木
俺たちより先に生まれ
俺たちより長く生きる
地獄をみている
それでも風に吹かれている
…見えるか?
他のことは考えるな
松のことだけ考えろ


"人生最期の曲"の伴奏のように
囚人たちのコップがリズムを奏でる
カンカンカンカン…

独りじゃない 皆がついてる

ブライアンが受けたハーブの死刑執行の衝撃は、
私の胸にも深く突き刺さる


今度こそ、と何度も再審請求を重ねても却下され
落ち込むブライアンにまたしてもジョニーD


真実は明らかだ、すぐに釈放されると軽く考えていたけれど
何年も経ち自分でも分からなくなって、真実がボヤけた
だが(君のお陰で)自分を取り戻せた
生き返った

連中はやるだろう
だが、今日執行されたとしても
俺は笑って逝く
真実を取り戻したから
あんたがくれた


終盤の展開は
それまでの鬱屈を取り戻すかのようで

その後のブライアンやジョニーDの様子を嬉しく眺めて
いい気分でエンドロール
…と、思ったものの

あの保安官のその後を知り
信じられない彼の国の差別の深淵を想い
「アラバマ物語」から少しも前に進んでいないのだろうか…


アンドラ・デイ
アラバマ・シェイクス
をゆっくりと聴きながら…
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