なみき

火口のふたりのなみきのレビュー・感想・評価

火口のふたり(2019年製作の映画)
4.0
性的な欲望を抱くタイプの人間にとっては、たぶん愛も性もごちゃ混ぜで、そしてそれは生活の自然な一部なのだと思う。だから二人の記憶には性が散りばめられ、二人の関係も性に彩られる。そして、生活はそれだけでなく、災害への恐怖や、食事、そういったさまざまなことがごちゃっも絡まり合ってできている。

普通、物語というのはそうしたごちゃごちゃの一部だけを切り離し、それを純化して語るのだと思いますが、この作品ではそれらは切り離し難く渾然一体となっていて、だからこそ愛おしく感じました。性的なシーンのことばかり話題になっていますが、私はこれを生活の映画だと思う。

性的なシーンが美しすぎず、むしろしばしば滑稽なのもよかったです。挿入したままベッドまでよたよた歩くシーンだとか、性器が腫れてしまって互いに様子を見たり冷やしてみたりするシーンだとか。それもまた、物語にするときに普通は削ぎ落とされるディテールで、でも、だからこそこの映画にとっては必要だったのだと思います。
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