記憶喪失のスーパースターと、
それに憧れるカラオケバーの店員。
という設定から想像するのは影武者というか、
成り変わりの話になってくのかと思いきや、
最終的には2組の母娘の愛憎の話だった。
今作で強烈なインパクトを残すのは
ヴィオレッタの娘のマルタ。
帰ってきたヴィオレッタを割れたガラス戸で出迎え、
謎な音楽の使い方とヒマワリの種の殻。
からの、あ、これはもう終わってるなと思わせる母娘のやりとり。
マンティコアを見た後に見ると、
もう明らかにこれが後々に効いてくるんだなとわかる。
なぜヴィオレッタとマルタの関係がこれほどまでに拗れているのかははっきりとは描かれていない。
でもマルタがひたすら愛情に飢えていて、
ヴィオレッタの手には負えなくなっている。
ここまで退廃的な人物もあまりいない。
やがて決定的にヴィオレッタの心が折れ、
もうやるっきゃないと決めるまでの長回し。
そこからヴィオレッタは腹をくくって
娘がどうなったか観客にはわからない状態で、
リラのもとへと向かっていく。
リラサイドの話は母親の話が唐突なのと、
ブランカの意義がいまいちわからなかったけれど、
娘を殺すことで母殺しとの共犯関係が生まれ、
解き放たれていくということか。
とにかくマルタ、ヴィオレッタの関係が嫌で嫌で最高でした。