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シークレット・ヴォイスのkakakaのレビュー・感想・評価

シークレット・ヴォイス(2018年製作の映画)
5.0
商業映画デビュー作が傑作、マジカル・ガールのカルロス・ベルムトの2作目。
未体験ゾーンの映画たち2019にラインナップされていたが、そもそもこの映画イベントはDVDストレートにするには勿体無い良作を発掘し、劇場上映する企画だから、ともすれば好みの別れるクセのある作品なのかなと邪推しながら鑑賞。
結論から言うと、前作を凌ぐ見事な作品だった。
ドッペルゲンガーの亜種、主観で自らを観察することの贅沢と絶望を描く。
後世に影響を残すような作家、芸術家、音楽家たち。だが彼らを享受し、感動する我らと同じように、自らの芸術を享受出来ない当事者の孤独。
世界的な人気を誇ったスペインの歌手リラ・カッセンは10年の沈黙の後、復活のライヴを前にして自殺未遂をおこし、記憶喪失に陥る。
そんな中、偶然リラのファンのそっくり画像をネットで見つけたリラ本人が、そっくりさんのヴィオレタに、歌に振り付けに学ぶという、やはり変わった脚本を描くベルムト。
だが当事者が自らを享受した時、同時に芸術家としての限界を迎えるというパラドクスに帰結するという見事な構成。
オリジナルとは何なのかも考えさせられる。
他人同志であったリラとヴィオレタの人生は、混じり、溶け合い、やがて鏡のようにヴィオレタはリラの悲劇さえトレースする結末の見事さよ!!
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