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ザ・マミーのshihoのレビュー・感想・評価

ザ・マミー(2017年製作の映画)
3.3
メキシコ産ホラーファンタジー。
メキシコと言えば日本からも旅行する人がいる陽気な土地のイメージがある一方、地域によっては麻薬カルテルに支配されていて政治家・警察官まで買収されている事が多く、無実の一般人が惨殺される本物の修羅の国。

その中でかなり治安の悪いであろう都市に住む子供達は、悪い奴らに親を殺されたり攫われたり家を焼かれたりして住むところもなく、保護者もおらずでストリート生活をしている。その子たちの目線でストーリーは進む。

こんな状況下にいる彼らの精神状態は多くの日本人にはとても想像がつかない。マズローの欲求ピラミッドをご存知だろうか、あれで言うと一番下の土台すら危うい状態だ。舞台に出てくる廃墟に出来た水溜りで生きる魚たちは、そのまんま彼らのことだ、投げ出されてどこへも行けない、放っておかれればそのまま死んでいくしかない運命である。全体的にこわいものを見るというより彼らの生活を見て感じるものの方が大きかったかも。

正直言ってホラー部分は添え物だった。あと何を写しているかよく分からないシーンが多くて、軽く観ようと思って部屋を真っ暗にするなどの工夫を怠った私も悪いのだがもう少しブラッシュアップしてほしかったと思う。

画自体は綺麗で惹きつけるものがあり、子供達も魅力があったのだが、ギャングたち悪者の名前と風貌の区別がつかず物語に入り込めなかった。なおかつ子供同士だから小さい諍いが多くてちょっとダレた。観終わってあらすじをまとめているサイトを見てやっと分かった部分が多かった。あと、主人公の女子が残り4人の男子よりだいぶ大人っぽかったのが余計に一体感がなく感じたのかな。

重力を無視してインクのように一筋にぐんぐんと伸びる血がちょっと自分の血の概念からはズレていたり、ボールで遊ぶとなると突然陽気な音楽が鳴り出すラテン・スピリットについていけなかったり、文化的な感覚の違いを感じたww

ただ最後まで観るとほんのり泣いてしまったりして、ちゃんとまとまっていたので良かった。死生観の違いを感じつつも、あたたかみを感じた。ファンタジーっぽさを出しているアイテムや生き物?たちをもっと効果的に分かりやすく出していたらもっと良かったのになと思った(パンズ・ラビリンスはその点凄く分かりやすかった)。

アメリカ大陸の子供の心にはヒットするんじゃないかな。日本の大人は全然対象ではなかった気がするw 怖さより悲しさが強かったけど、総合するとわりと良かった。
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