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ゼイカム -到来-のkuuのレビュー・感想・評価

ゼイカム -到来-(2018年製作の映画)
2.5
『ゼイカム 到来』
原題 Await Further Instructions.
映倫区分 PG12.
製作年 2018年。上映時間 91分。

謎の知的生命体に監禁された、家族の運命を描くSFスリラー映画。
出演は『ハリー・ポッター』シリーズのデビッド・ブラッドリーほか。

クリスマスに集まったミルグラム一家は、家族団らんとは程遠い雰囲気の中でそれぞれ眠りにつく。翌朝、長男が家のドアを空けると、黒いメタリックな物質が家を覆っていた。
家の中に閉じ込められてしまったことに気づきパニックに陥る中、突然リビングのテレビ画面に
『指示があるまで家の中で待機せよ』
ちゅうテロップが映し出される。家族は一連の出来事を政府の安全対策だと安心して指示に従うが、画面に映し出される指示内容は次第にエスカレート。
精神的に追い詰められた彼らに、謎の生命体が襲いかかる。

一家の苗字であるミルグラムは、映画全体を通して支配的なテーマである権威への従順さについてのミルグラム・テストにちなんでいる。
また、一家はスタンフォード通りに住んでいることが明らかにされているが、これは、権力と権威の認識という同様のテーマを研究したスタンフォード監獄の実験にちなんでる。
『ミルグラム・テスト』とは、
閉鎖的な状況における権威者の指示に従う人間の心理状況を実験したもので、アイヒマン実験・アイヒマンテストとも云う。
50年近くに渡って何度も再現できた社会心理学を代表する模範となる実験でもあるそうな。

扨、今作品の奇妙なブリット・Sci-Fiホラー作品は、死ぬほど真面目で不穏で、パラノイア的SF物語として始まり、次第に不条理でシュールな、しかしそれでも極めて荒涼とした骨太のスプラッター映画へと変化していく。
もちろん、シリアスなままであってほしかったんやけど、もっともらしく知的な結末を考えるのは至難の業であったことも確かでした。
そこで、その代わりに、デイヴィッド・クローネンバーグ的なボディ・ホラーに、機能不全家族の陳腐な表現と、人種差別を誇張して展開させただけやった。
でもまぁジョニー・ケヴォーキアン監督は速いテンポと不穏な雰囲気を維持し、一定の間隔でたくさんのアクションを繰り広げてはいました。
第3幕は、筋書き的には完全に狂ってるけど、特殊効果は悪くなかった、メイクアップ・アートはぞっとするクソやったが。
傑作とは脅迫されても云わないが、また、未来のカルト的な逸品でもないかもしれないが、予測不可能でSF/ホラーの実験であることは間違いなく、観るのがムダとは個人的には思わない程度の作品でした。
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