ユウサク

ディアマンティーノ 未知との遭遇のユウサクのレビュー・感想・評価

4.3
どうみてもクリロナなスーパースターサッカー選手のディアマンティーノとシークレットサービスで潜入捜査を行うアイシャの奇妙な出会いがもつれにもつれて、みたいな?本なら「奇書」っていう表現があるけど映画だとどうしたらいいんだろう。「怪作」とかじゃちょっと追いつかないレベルで奇妙奇天烈な映画だった。エンディングで監督二人の名前が書かれたハート型のバルーンが踊っているのは映画史でこの映画ただ一つでしょう。
そのくせコントラスト強め+グレイン多め+自然光多用のフィルムルックがめちゃくちゃイケてたりするし、おそらく現実を反映する感じで政治のことを扱ってるしで闇鍋感が凄い。クライマックスでは急に60〜70年代のスパイ映画風になって劇伴も壮大なオーケストラになって絶体絶命!からの!をしっかりカッコよく演出していてびっくりした。てかあの展開を見てもしかしてアイシャってレズビアンもしくはバイセクシャルでアフリカ系のジェームズ・ボンドなんじゃ……?とか思った。あのアジトの意匠とか凄い007シリーズっぽいし悪人が車椅子乗ってるのとか(良い表象ではないが)も含めて雰囲気を作り込んであった。地味に剣を引き抜く動作がここで再び行われたりしてて実は監督たち超映画上手い人なのでは?という疑念も。
男性はディアマンティーノとそのお父さん、よくわからんプロパガンダ屋の3人しかおらず、あとは何かの大臣も偉い科学者もシークレットサービスの長官的な人もみんな女性だったし、アイシャとジゼルは女性同士で職場恋愛してるし、双子姉妹はパワフル過ぎてBAD BITCHな感じするし、ディアマンティーノの身体の変化はトランジションの過程を連想させるし、とクィアな雰囲気もある。まあ身体の変化に関してはディアマンティーノ本人の意思ではないしあくまでギミック的なものになってしまってはいるけど、そのふくらんだ胸にアイシャが惹かれるような描写があったりしてちょっと難しい。せっかく良い設定のレズビアンカップルが登場したのに最後ヘテロ恋愛になっちゃうんかよ(しかも一度は養子だった人と……?)って気持ちもわかる。

サッカー界のスーパースターがひたすら良い人というか逆に子ども過ぎる設定は面白かったけど、それ故に難民の子どもを引き取ると言いながら右翼的なキャンペーンに出演してたりと、ちょっと空っぽ過ぎるところは好きになれそうでなれないギリギリのラインだった。クリロナの実話が反映されてたりするんだろうか。
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