Eike

アウトランドのEikeのレビュー・感想・評価

アウトランド(1981年製作の映画)
3.2
1981年の作品ですからご存じない方も多いでしょうね。
大ヒット作でもなくどちらかと言えば地味な作品だったこともあって余り話題にもなりませんでしたが妙に気に入った「SF西部劇」。

木星の月:イオにある鉱石採掘場の保安官オニール(S・コネリー)は鉱山労働者の間で頻発する奇妙な自殺・錯乱・暴力行為の裏に違法な合成興奮剤の存在を突き止めます。
そしてその流通経路を辿って行くと鉱山を経営する母体の企業体そのものへの疑惑が高まります。
鉱山の総監督シェパード(P・ボイル)はそんなオニールに賄賂の提供を持ちかけるのですがそれが無駄だと悟ると強硬手段に打って出ます。
オニールに味方するのはベテランの女医Dr.ラザラスのみ。
そして万人が息を潜める中、オニール抹殺の指令を受けた殺し屋たちを乗せた連絡船が到着。
宇宙空間という極限の舞台で死闘の火ぶたが切って落とされる・・・。

などと粗筋を追うとアクション満載のヒロイックなドラマを想像しそうですがかなり感触が違います。
派手なアクションよりは異空間の閉鎖環境でのサスペンスがメインになっています。
これはやはり当時大ヒットとなった「エイリアン」の影響を大きく受けているのは明らか。
それまでSFと言えば未来風の宇宙船やきらびやかな宇宙基地が舞台と決まっていたもんです。
しかし本作ではリアリティに富んだ巨大な宇宙鉱山のセット(ミニチュアですが)や生活感が出まくりの鉱山労働者たちの居住区の描写もあってSFの設定でありながら非常に「リアル」です。
それでいてちゃんとクライマックスの死闘では宇宙空間や低重力の設定を生かした展開も盛り込まれていてSF映画らしいサービスも忘れていません。

しかし本作の魅力はやはり主役のショーン・コネリー氏にあり。
本作撮影時で51歳とアクションシーンだけが取り柄の娯楽映画の主演では少し違和感があるかもしれませんが、本作での存在感は抜群で本作でのコネリー氏は本当に渋いです。
若いころのギラギラとした男臭さが少し薄れて男なら見習いたくなる正に燻し銀の貫録です。

対する敵役のP・ボイルはちょっとアクが不足してますが、この作品最大の功労者はDr.ラザラス役のF・スターヘイゲン。
コネリー氏のお相手に若手女優を起用してロマンス色を付ける事も出来たでしょうがコネリー氏と同い年(共に1930年生まれ)の舞台のベテランを配することで華やかさは薄れましたがぐっと締まった雰囲気に。

派手なアクションを期待すると肩透かしを食わされる事になるかもしれませんが異色のSF西部劇ということで意外と大人向けの作品です。
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