ゴン吉

ジェロニモのゴン吉のレビュー・感想・評価

ジェロニモ(1993年製作の映画)
4.2
西部開拓時代の白人の残虐行為とそれに贖った先住民の戦士ジェロニモの苦悩を描いた歴史ドラマ。 

マット・デイモンが主演、ジェイソン・パトリック、ウェス・スチュディ、ジーン・ハックマン、ロバート・デュバルらが共演。

1885年、先住民族であるチリカワ族の一人の戦士(ウェス・スチュディ)とその仲間が騎兵隊に抵抗を続けていたが、騎兵隊による女子供までも虐殺する残虐な行為に耐えかねて降伏することに。
戦士の名はゴヤクラ。だがメキシコ人は彼を”ジェロニモ”と呼んだ。
投降したジェロニモを、騎兵隊のゲイトウッド中尉(ジェイソン・パトリック)とデイビス少尉(マット・デイモン)が居留地まで護送する。ジェロニモらアパッチ族は隔離された狭い保留地で自由を奪われ半ば強制的に農業を営まされる。ある日、アパッチ族よる祈祷の儀式に危機感を抱いた騎兵隊が一方的に祈祷師を射殺する事件が起きる。ジェロニモたちは騎兵隊に応戦し、仲間たちとともに逃走してメキシコに向かう。ゲイトウッド中尉とデイビス少尉らが追跡するが…… 

ジェロニモ掃討作戦に参加した22歳の若き騎兵隊の白人将校の目を通してジェロニモの人物像が描かれている。
若くて幼顔のマット・デイモンが純心な好青年の将校を好演しており、ジーン・ハックマンやロバート・デュバルらベテランの名優が脇を固めている。
白人将校が呟く。
「チリカワ族は約束を必ず守る こっちが裏切らなければ」
悪者として描かれることが多いジェロニモだが、白人による横暴に耐えながらも部族のことを思い憂い、屈辱の日々を過ごしていたことが描かれている。
もともとは広い大地を自由に生きていた狩猟民族の先住民たちに対して、白人は土地を奪い、食べ物を奪い、女子供まで虐殺したうえ、収容所のような狭い居留地に閉じ込めて彼らの習慣や生活の自由さえも奪う。
美しく雄大なモニュメントバレーの風景に対して醜く心の狭い白人が対照的で、野蛮で残虐な白人による先住民に対する殺戮行為には心が痛む。
特にテキサス人の白人は、アパッチ族の男には200ペソ、女には100ペソ、子供にが50ペソの賞金を懸けて、賞金稼ぎまでも使って民族皆殺しを謀る。
政府も先住民を騙して利用するだけ使ったあげく、後は一方的に約束を反故にして先住民を拘留する。
アメリカ政府と白人の野蛮で残虐な横暴に対して、最後に白人将校が良心の呵責に耐えかねて騎兵隊を去るのが印象的です。
先住民の言葉が心に刺さる。
「あんたは正しかった 白人と戦ったのは間違いじゃなかった 白人たちは俺にウソだけしか言わなかった」
ジェロニモの最後の言葉が心に響く。
「銃は俺を殺せなかった それが俺の力だった」 

2024.8 NHK BSで鑑賞(プレミアムシネマ・字幕:松崎広幸)
2023.8 NHK BSで鑑賞(BSプレミアム・字幕:松崎広幸)
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