つるみん

童年往事 時の流れのつるみんのレビュー・感想・評価

童年往事 時の流れ(1985年製作の映画)
3.9
侯孝賢監督自身の幼少年期を描いた自伝的作品だからこそずっと観たかった一作。

50年代〜60年代の高雄。
国共内戦の終盤で、大陸と台湾の緊張した情勢が続いている中〝戦争〟という直接的描写を省きながらも、怒涛の時代を生き抜いているという情報が所々に散りばめられてある。それはあくまで侯孝賢自身が過ごしてきた環境だからこそ、それをそのまま映画に閉じ込め完成させたのだろう。

広東省から台湾に移り住んだ彼らに待ち受ける出来事。主人公である阿孝とその祖母の関係。
小さい頃なんて大人についていくのが精一杯で、状況の把握は愚か、ポカンとするのが当たり前であり、そんな自分自身を映す侯孝賢は凄いなと…。大人になってから分かることなんて無限にあって、その頃分からなくてもそれで良いのだ、分からなくて当然だ!だけど何となく気付いてはいるよね…というのが、阿孝(自分自身の幼少期)を通して絶妙に表現されている。

侯孝賢の家族を架空のキャラクターとして映画に映り込ませているが、こういった家族というのは当時大陸から台湾に来たいわゆる外省人と呼ばれる人たちは多くいたはずだ。各々の時代に生きた人によるアイデンティティの異なりという部分、本作では話す言語の違いなどでハッキリと表現していたが、日本人にもそういうのはあるだろう。その時代の流れに揉まれながら必死に生き抜こうとする姿はいつの時代にも来るものであって、丁度この先が『牯嶺街少年殺人事件』と繋がると分かった時の映画ファンとしての鳥肌は凄い。

当時の歴史を学んで『牯嶺街少年殺人事件』を観れば、内容の理解力は高まるだろう。しかし本作を観て『牯嶺街少年殺人事件』を観たら、キャラクターの心情や説明のない行動に説明が不思議と付いてしまうのだ。面白い。

これを観終わった後に真っ先に『牯嶺街少年殺人事件』を観返したくなった。が…長いんだよな(笑)
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