ルサチマ

この世界を覗く――戦争の資料から/世界の映像と戦争の刻銘/世界の映像と戦争の刻印のルサチマのレビュー・感想・評価

4.9
巨大実験用水路の波の動きを捉えた映像や、メイキャップを施される女、アウシュヴィッツの空撮画像など脈絡のない映像がモンタージュされていく中で、次第にこれらの断片が収容所に移送されたユダヤ女性と、当時の彼女たちがなされたであろう身体的迫害のイメージが例えばメイキャップのために拘束された女性というイメージへと結びついていく。小津安二郎は小説ではなくエッセイのような映画に憧れたらしいが、小津のピローショットの存在を、ファロッキがモンタージュした脈絡のあるかないかも不確かな映像の羅列の形式であったり、シネマカメラと街並みを再現したミニチュアを映し出す特殊カメラ、またゲームやコンピューターの画面といった撮影機材と表示形式も一緒くたにしてしまう形で更新した今作の在り方自体がエッセイ映画としての一つの到達点に位置付けられると思う。
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