イスケ

ラヴィ・ド・ボエームのイスケのネタバレレビュー・内容・結末

ラヴィ・ド・ボエーム(1992年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

国外退去から戻ってきての、ボードレールとの再会がもう良すぎてさ。
ロドルフォとボードレールじゃなくて、マルセルとショナールをアップで映し続けるのがほんと好き。
それでいて耳からボードレール達が再会をどれほど喜んでいるのかが伝わってくるの。

ショナールの前衛的すぎる音楽を聴いてる時の女性陣の表情といいw、言葉で語らせない表現が相変わらず素晴らしすぎますね。

僕、あの音楽とっても好きですよw
メシ食いながら聴く曲ではないけど。


貧乏だし世間的にNGなこともするにも関わらず、三人に漂っているのは謎の上品さ。
これは、芸術家としての高尚な考え方がベースにあるからでしょうね。

ミミが「愛してるけど貧乏じゃ生きられないわ」と言って一度は離れていくのはごもっともなこと。でも、最終的にミミは戻ってくるわけです。

ロドルフォがミミの願いを聞き入れて安定的な職業に就いていたら、生活は少しはラクになったかもしれないけれど、ミミの愛は徐々に失われていったような気がする。
きっとミミはロドルフォの俗っぽくないところに惹かれたのだと思うんだよ。

ここに人間の抱える矛盾というか、一筋縄ではいかない感情が表れているなぁと。
いや、好きなものと生きることが分断されている社会が悪いとも言えるか。

もうひとつ矛盾を語るとすれば、富豪になってから育む友情と、貧乏時代に協力し合った友との友情を比べると、圧倒的に後者の方が魅力的に映る。
でも「明日からどっちの人生でも選べます!さぁどっち!?」と言われたら、悩んだフリだけして富豪の人生を選ぶのは目に見えてるんだよねw

本当に資本主義って難しいし、ある意味では人間らしさを失わせるものなんだろうなと考えさせられる。


そして、今回も炸裂するカウリスマキ×ジャン=ピエール・レオの抜群の相性の良さ!
スカした笑いにぴったりハマる。

美術品コレクターの初期衝動に立ち会えたのと同時に、ロドルフォ・マルセル・ショナールの初の助け合いのシーンでもあったかな。
面接前の作家が急に画商になるの笑ったわw


最後にミミの医療費のために、それぞれが大切なものを売ったのはシンプルながらじんわりきたなぁ。

結局、ボヘミアンの敗北だったわけだよね。
いくら頑なに俗世間に背を向けて生きてみても、お金を稼ぐ必要性には勝てなかった。
特に、ロドルフォなんて普通の仕事に就いたのだから、極端に言えば、自分を支えていた高尚さやプライドを捨てたとも言えるわけで。

それでも、人のために何かを捨てられるという友情がたまらなく良い。

「美しき敗北」

そう呼ばせてください。

ミミはロドルフォが働く姿を直接見ることなくこの世を去ったのも、良かったのではないかと思う。


「条件がある……ビールとおつまみ代は俺が出す」

これ、飲み屋で言いたい。
イスケ

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