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王国(あるいはその家について)のCUのレビュー・感想・評価

3.5
物語と言えるほどの物語はなく、主人公、主人公の友達とその夫の3者関係を描きながら、同時に役者が「役」に、映画が「映画」になる過程をシーンと台詞の反復により提示するという、かなり実験的な作品となっている。

その実験的な試みが行われなければ、言い方は悪いけどやや凡庸な作品だったろうが、逆に実験的な試みがこの作品の成立を妨げていることも確かであり、しかし、成立を故意に拒む複雑さ難解さを提示することで、何か哲学的な作品なのかと思わせるような匂いを発させる方向へ舵を切ったのは、話題性をつくる部分では良かったのかもしれない。

ただ、鑑賞後、何か釈然としない想いを抱えてしまった。その理由は、すなわちこういう実験は、映画を作る前に終わらせておくべきことなんじゃないかと感じたからだ。

簡単に言えば、わざわざ映画館まで来て何故メイキングを見せられなければならんのか、ワシは映画を観に来たのでござるよ、ということである。

何かありそで何もない。

今風に言えばメタ映画なのかもしれないけれど、私はメタではなく映画が観たかったのである。
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