踊る猫

スプリングスティーン・オン・ブロードウェイの踊る猫のレビュー・感想・評価

4.5
ステージを終えたあとのブルース・スプリングスティーンに、若い世代のひとりの観衆が固い握手を求め、彼に向かって熱心に語りかけているところがひときわ印象的だった。世代を越えて愛されるボス……私は実を言うとボスに関してはそんなに好感を持っていなかったので(いや、もちろんいい曲は沢山あると評価するが)、このステージを見てその人間味溢れる語り口と歌に惹き込まれてしまった。スタジアムのステージならまた違った側面を見せるのだろうが、ここでのボスは「なじらない」と「あおらない」を守り自分のコミカルな側面を晒し、それこそ後の世代に受け継がれるべきなにかを伝えんとしているように思われる。もちろんトランプ政権の施策に関するカウンター的な意見も(名指しこそしないものの)述べているが、あくまで内省的に、かつ閉じることなく自分を見つめ直して語り続ける彼の求道者的佇まいは新しいファンを生み出すのにも充分だし、すれっからしのファンをも唸らせうる極めて質の高い&渋いパフォーマンスと見た。だからこそ、この素晴らしいステージングに日本語の歌詞を字幕として出さないネットフリックスの見識を疑ってしまうのだが……。
踊る猫

踊る猫