ぴらふ

セメントの記憶のぴらふのレビュー・感想・評価

セメントの記憶(2017年製作の映画)
3.7
セリフが少ない本作は、セリフ量に反して作品から得られる情報量はかなり多い。

この映画で最も印象深いのはベイルートで働くシリア人移民労働者の表情。
様々な表情ではなく、皆が揃って無表情に見える。
ドラマティックに描くなら、フィクション等では苦悩を思い浮かべるような表情をしているだろう。
だが、彼らは無表情。ここにドキュメンタリーの真髄を感じた。
人が苦痛を感じ、悲劇を経験した先に行き着くのは、「無」で間違い無い。
決して見せようとしていない。全てを奪われたから当然だ。その無表情から戦争の罪深さを再認識させられた。

タイトルの『セメントの記憶』が持つ意味を理解した時、より深い悲しみを感じる。同時に、戦争に対する強い憤りを覚えた。鑑賞し終えた今でも建設現場のあの重厚な音は頭にこびりついている。そして、その音に付随して表裏一体と言わんばかりに戦争の音も頭から離れない。無意味な破壊と建設をこの世から無くしたいと強く願う。
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