とうがらし

ズカルスキーの苦悩のとうがらしのネタバレレビュー・内容・結末

ズカルスキーの苦悩(2018年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

スタニスラフ・ズカルスキー。
その名を知る人はどのくらいいるだろう?

20世紀のミケランジェロとも言われる、ズカルスキーは断言する。
アメリカで最も名高い芸術家で、自分以上の知識人はいない、天才としか言われたことがない、と。
彼の作品には、古代文明を受け継いだようなパワーと、有無を言わせぬ凄みがある。
確かに、正真正銘の天才としか言いようがない。
膨大な知識。
その根底には、枯渇せぬ探求心がある。
先日書いた集合的無意識と共通する領域にも踏み込んでいた。
なぜ彼が、芸術家を志したか?
美女をメロメロにしてSEXするため(笑)
その性欲は80歳を超えても衰えない。

インスピレーションの源泉は自己の内なる真実。
独自のアルファベットを開発して、学校教育による矯正を拒む。
学校は自己のオリジナリティを歪めて、他者と同じように平板化、矯正されてしまうからだそうだ。(一理ある)
作品の肉体表現が驚くほどうまく、嘘か真かその基礎は父から”直接”学んだという。

ポーランド生まれの彼は、移住したアメリカのことをこう評す。

文化がない。
関心は愛や情熱から逸らすことばかり。
国民はどんどん馬鹿になって、国は内部から滅ぼされてしまう。

これはアメリカに限らず、現代にも当てはまることがあるのでは?
本作で一つ残念なところは、彫刻作品の魅せ方。
ジュエリーや化粧品のイメージCMを見るような局所的なもので、全体がじっくり見れない点。
それを除けば、非常に面白い。

前半は、彼のポートレート的な表層。
口が悪く偏屈で、挑発的。
ぶっ飛んだ発言と行動の数々。
時に荒唐無稽な理論で、時には笑ってしまうくらい的を射ている。
パンクで、ロックで、自己の内なる芸術性が触発されること間違いなし。

後半は、彼の真相の深層へ、シリアスに展開。
類まれな才能がありながら、今では誰も知られない存在に。
失われた作品”苦悩”
彼の生涯を辿ると、戦争の歴史と重なり、存在が亡き者にされた理由が明らかになる。

芸術を志す人は必見のドキュメンタリー。

予告編
https://www.youtube.com/watch?v=sPkoW4cmqT8
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