ヨミ

アスのヨミのネタバレレビュー・内容・結末

アス(2019年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

難しい話だった……。

難しさは2点に由来する。まず「ぼくの頭が悪くて整理できてない」、そして「それっておかしくない?」だ。

まず黒人差別撤廃などのマイノリティの解放運動が全体を貫くテーマである、ことはわかる。”What are you people?”という初めの問いに”Americans”と答えるシーンに集約されている。また、友人の白人女性が成り代わったあと、楽しそうにリップを塗るシーンもまた、「普通のことができるようになったマイノリティの喜び」だろう。
感じるのは、常に表側(白人/男性)の影に立たされて、従う側であったマイノリティによる結束と逆襲。しかし本作はそんなに単純に図式化できない。なにしろ襲撃される主人公たちもまた黒人であり、女性である。家族ぐるみの友人(というよりマウント合戦の相手)は完全な白人上流家庭であり、上辺では良い関係を続けるものの、主人公たちは付き合う上でもどこか居心地の悪さを感じているようだ。
これらのことによってどのような効果が狙われているのか、整理しきれていない。いまだ解決されていない黒人差別についてなのか、それともそれ以外の、照明の当てられていないマイノリティたちなのか。

さて、「テザード」について不明点だが、あれは元々人間(表側)が肉体複製技術によって作ったものだが、魂は表側に占有されているので動作が基本的に表側に支配されているということでよいのだろうか。彼らは互いに意思疎通しているのかな。主人公たちは何がどう「特別」なのだろう。Tシャツを欲しがるシーンでは、下側の方が先にTシャツを見て、表側がTシャツを欲しがるように見えたが、だとすると裏が表に影響できた意味で特別なのだろうか。じゃあTシャツを広げて見せていたテキ屋のにーちゃんもある意味で特別なのでは?というか、なんかそうなるとめちゃくちゃフロイト的になってしまってなんだかな……。
あと最後の「自分は元々テザードだった……?」と示唆されるシーンも謎で、じゃあなんで主人公は地下について無知で、表側だった方は歴史とかに詳しいのだろう。教育があったのか?(表が学校に行ってるとき、裏もまた学校に行っている……? 喋れてるやつ他にいたのか……?)

謎だらけである。しかし黒板側から裏と表の顔を並べたショットとか、迫力の強いのがあったり、怖い感じが最初からあったりするなどはよかった。
個人的には世界が滅びる系は話が壮大になりすぎてあまり得意ではないのだけども(人知れず乗っ取られて日常が続いてしまうとかのが好き)。
ヨミ

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