ギサブロー

アスのギサブローのネタバレレビュー・内容・結末

アス(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

予告編で家族のドッペルゲンガー4人が一斉に迫ってくるシーンがあまりにも怖かったので気になって映画館で鑑賞。

主人公家族の母親が幼い頃、海岸沿いの遊園地の端にあるミラーハウスで自身の影と遭遇するプロローグ。ミラーハウスはもちろん、その前に遭遇する、意味ありげに聖書の一節を指し示す謎の男。童謡のような古い民族の歌のような音楽に、ウサギの大量飼育場のような謎の場所を映すオープニング。不気味で良い。
それから時が経ち、夫と子ども二人で同じミラーハウスのある海岸へ。夫はいい奴だけど能天気。上の娘はスマホ依存症。下の息子は落ち着きがない。お隣り白人家族とは表面上は仲良くしているものの内心はよく思っていない。母親は失語症になったほどのトラウマがあるので勿論気が乗らない。しかも海岸を訪れる時に死体で搬送される、謎の聖書男。そしてその後もなぜか海岸に突っ立っていた。悪いことが起きそうな不安定さに期待が高まる。

海岸から別荘に戻った夜に例のドッペルゲンガーたちが。暗闇に並び立つ姿がなんとも怖い。一斉に襲いかかり別荘に侵入してくるシーンは期待通りの怖さ。侵入してから間もなく、人間離れした動きで家族を制圧するドッペルゲンガーたち。姿はそっくりだが赤い装束に30cmはありそうな大きなハサミ、血走った表情、言葉がまともに通じない。主人公たちの影と自称(あとアメリカ人だとも言っていた)するが目的や素性はよくわからない。恐ろしい。
それからは母親・夫・娘・息子はそれぞれの影と戦うことに。影側の母親がリーダー格で、しゃがれ声で曰く、主人公たちを苦しませる時間を楽しみたい、のだそうだ。
やはり謎だ。やはり呪われたミラーハウスからやってきた超常的な何かではなかったのか。

それから父親は足を負傷しながらも影に辛勝。どうやらちゃんと殺せる相手らしい。母親も娘・息子もそれぞれ何とか逃げることに成功する。一方、別荘にいた白人家族にもドッペルゲンガー達が迫る。なんと主人公家族だけではなかった。広範囲な呪いなのか。あっという間に皆殺しにされる白人家族。その惨劇を知らずに避難しにくる主人公家族。戦闘になるがなんやかんやで全員返り討ちにする主人公家族。どうやらドッペルゲンガーたちはそこまで強くないらしい。テレビのニュースによれば、ドッペルゲンガーはアメリカ全体に出現して殺りくしているらしい。一体どういった現象なのか。

ひとまず別荘から離れ、白人家族の車で例の海岸へ行くことに。夫は足を負傷、母親は手錠をつけられているため娘の運転で。これは助かっても色々とまずそうだ。影娘の襲撃も退け海岸にたどり着くことに成功する。道中はドッペルゲンガーによる殺りくで死屍累々。生存者の気配がない。主人公家族が特別強かったのだろうか。そこに待ち構える影息子。息子と鏡合わせの動きをすることを利用して倒すことに成功するが息子は影母親に誘拐される。あっという間にさらって消えたので、やはり超常的な存在なのだろうか。

母親は息子を救出するために例のミラーハウスに向かうことに。途中、海岸には遠い浅瀬まで、手を繋いでずらりと伸びるドッペルゲンガー達の姿が。ミラーハウスに入り、別荘の火かき棒でびっくりフクロウを叩き壊し、幼少期に自身の影と遭遇した場所へ。そこには地下への隠し扉が。地下はやたらと整備されていてエスカレーターまである。とてもきな臭くなってきた。オープニングで飼育されていたウサギが解き放たれている地下街。学校の教室のような部屋で、ついに影母親と対峙する。影母親から真実が告げられる。なんと、自分たちがかつてアメリカ政府に作られたクローンで、地上の人間に復讐するために今日まで計画を立てていたのだという。クローンは自我が崩壊しており、なぜか地上の人間と行動がリンクしてしまうらしい。なんということだ(色んな意味で)。
そして影母親との対決。踊るように母親をいなす影だがなんやかんやで母親は影を火かき棒で屠り、息子を救出することに成功する・・・。辛くも家族全員が生存できた。安全な地を求めて家族は救急車を運転して海岸を離れる。しかしここでもう一度場面は母親の幼少期に移る。ミラーハウスで自身のクローンと対峙する。クローン母親はオリジナルの首を絞めて失神させ、地下世界へ誘拐。なんと服を取り替えて成り代わりを果たしていたのだった。主人公母親はクローンで、火かき棒で貫かれた方がオリジナルであった。失語症だったのは本当に喋れないからであった。恨まれるはずである。そしてまぁありがちな展開ではある。車の中で見つめ合う息子と母親。息子はなんとなく母親の素性に気づき仮面を下ろし、エンディングへ。空から映すアメリカの山には大量のクローン達で赤いラインができており、地上にはすでにクローンが溢れているという、色々と不安を煽るシーンで幕は下りる。

総括として、前半はとてもホラー映画していてよかった。サプライズホラーという触れ込みの通り、音と演出でとても気持ちがいいくらいに驚かされる。同じ映画館で見ていた外国の女性がとてもわかりやすく叫んでいた。しかし、あっさり倒されてしまうドッペルゲンガーというかクローン人間たち、それなのに主人公家族以外はあっさり殺されるその他大勢のアメリカ人(ハサミしかないので銃で対抗できそうである)。クローン人間という浮いた設定など、後半は特に粗が多かった。
クローンだと知った途端に敵がチープな存在に思えてしまったので、人間はやはり正体がわからないものに恐怖を感じるものなのだなあと思った。
※冒頭で、「アメリカの地下には広大な地下通路がある」というモノローグがあったのだが、とってつけたようなものでやはり浮いてしまう。
中途半端にサイエンスな設定を持ち込まれると、ウサギだけでどうやって食料を解決するのかとか、色々と突っ込みたくなるものである。
そんな後半のおかげで、この作品はB+級映画のような評価に落ち着くのではないかなあと思う。
序盤のようなスケール感で、敵の正体もよくわからないまま、ソリッドシチュエーションスリラーに徹していて欲しかった。