天豆てんまめ

アスの天豆てんまめのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
4.1
アカデミー賞女優・ルピタ・ニョンゴの壮絶なメソッド演技(と顔芸)を大スクリーンで当時堪能した。

私としては、ホラー映画で初めてアカデミー脚本賞を受賞した「ゲット・アウト」を凌ぐ面白さ、スリリング展開、まさにのめり込んだ2時間。

ホラー映画は苦手だが、映画としての面白さで、怖さよりも好奇心が優る唯一の監督、ジョーダン・ピール。

さすがにコメディ作家出身だけあって、ところどころで連発するギャグ的ブラックジョーク。

特に隣人さんの悲劇で劇場中に鳴り響く軽快なヒップホップ!そして全く使えない旦那さんゲイブ(いや、たまに活躍する)。存在自体がギャグ 笑

この映画の核はドッペルゲンガー(世の中には自分とそっくりな人間がいる)という大好きな切り口。

そしてドッペルゲンガーを扱った映画史上一番楽しめ、尚且つ、観終わった後に色々と考えさせられ、心の奥底を今も不気味にノックされ続けている。これは何の感情だろうか。

自分たちとそっくりな、’わたしたち’との対面は予告で観てわかっちゃいるけどやはりドキドキする。そこに至るストロークもその後のジェットコースター的展開もたまらない。そしてこの映画は中盤に不要なダレが無い密度の濃い映画となっている。

そして深くは言えないが、クライマックスのあれは、のめり込んでいた私には全く予測不可能で、真実を知って、ぞーーーーーっとしました。

前回の「ゲット・アウト」は人種差別というテーマを核に孕んでいるが、今回も色濃く、アメリカに根ざす(いや、日本にも通底する)社会性を強く打ち出していて、観ている観客の人生観、社会通念を試す作品になっている。

でも、やっぱりこの映画の魅力は、ジョーダン・ピールの練り込まれた脚本と冴え渡った映像音響設計と予測不能な驚愕展開、そしてポスターの表情ですでに只者ではないルピタ・ニョンゴの斜め上行く顔面インパクトに、五感をフルに刺激された。

怖い、怖いのだけどもう一度観たい、そう思わせてくれる作品だ。