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アスのCookieMonsterのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
3.8
休暇に別荘に来た1組の黒人家族が、自分たちにそっくりなアスに襲われる

込められた様々な隠喩は前作ゲットアウトからしっかりと引き継がれている
usは私たち自身であり、アメリカUS自身でもある
今回も人種差別問題の扱い方、物語への差し込み方が素晴らしい
主人公は黒人だけど、白い服を着ていて中流階級以上の生活を送る白人の隠喩になっていて、同じ顔をした"わたし"が復讐にくるというストーリーは同じ人間であるにも関わらず、ずっと差別され日陰に追いやられてきた人種問題を物語っていて、主人公に鎖を嵌め、人種逆転の世界を体験させるアイデアの奇抜さが素敵
途中不可解なシーンがいくつかあるけれど、それがラストにて解決される手腕も見事
特にスリラーでありながら、エリザベス・モスのクローンが化粧をして微笑むシーンなどは、単なる恐怖の対象ではなく、影に追いやられてきた悲哀を感じさせるとてもいいシーンになっていた

あと、この作品で素晴らしいのは、
①襲われる家族がそれぞれに恐怖の対象と戦い、単純な庇護されるだけの存在にならないこと
②腕力が弱い女性が最前に立たなければいけないよう初めに夫に怪我をさせるなどの理由づけをうまくしていること
③彼女1人だけで戦いを挑まなければいけない必然性を明確にし、それをラストで見事に回収していること
が挙げられると思う

また、前半の家族の団欒をしっかりと描くことでその後の落差は観客にとってわかりやすいし、主人公が感じる未知への恐怖も意味のあるものになっていて、物語としてのメリハリがある構成になっている

いくつか不可解だったのは、
・何故エリザベス・モスは自らの頬を抉ったのか?
・何故主人公はエリザベス・モスに生かされたのか?
というところ

何にしろ、手を繋ぐという行為の遺伝子や鎖へのイメージづけなど、隠喩が沢山あるし、見直すと見つかる創作者の意図なども多そうだから、よくできた作品だと思う
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