矢吹健を称える会

荒馬サンダーホーフの矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

荒馬サンダーホーフ(1948年製作の映画)
3.6
 冒頭、近づく蹄の音を聞いてメアリー・スチュアートが銃を構えるショットひとつで、もうこの映画の良さは確定という感じがある。続くプレストン・フォスター×ウィリアム・ビショップの殴り合いも、絶妙な移動撮影でリズミカルにとらえられている。全体的に夜間のシーンは完璧といいたいくらいのダイナミックな画面が展開される。

 正直(77分の小型西部劇としては、かなりこみいった)お話のほうはピンと来ないのだが、演出は素晴らしい。人間は3人しか出てこないという極端に切り詰めた映画を、ここまで面白くするのだからフィル・カールソン侮るべからず。見捨てられた空き家で休憩するシークエンスは、屋外から屋内に舞台を移し、空間を区切ることによってサスペンスをいや増しするテクニックに、やはり黄金期ハリウッドは地力が違うとの思いを新たにする。ラストだって感動的。