イッテルビウム中田

ミュウツーの逆襲 EVOLUTIONのイッテルビウム中田のレビュー・感想・評価

ミュウツーの逆襲 EVOLUTION(2019年製作の映画)
5.0
『名探偵ピカチュウ』のリアル志向なCG化に違和感を覚えたため、ポケモン映画のなかで唯一視聴していなかった本作。
こちらは本編新作のスカーレット・ヴァイオレットと同じようなタッチで表現されており、ポケモン本来のかわいらしさが忠実に再現されている。

内容の大部分は旧作と同じである。リーフストームや氷の礫といった、当時には存在していなかった新技を披露している点は刷新されている。

ところが、本作ではアイツーとの交流がすべてカットされている。これにより、旧作が評価されていた骨太のテーマである〝私は何者か〟についてやや説得力が欠ける。
ミュウツーにとってアイツーは母親代わりの存在であり、ミュウツーはアイツーを喪失したことでアイデンティティの模索に苦しむことから逆襲する。今作では逆襲の理由がやや普遍的な怒りからきていた。

旧作におけるアイツーのセリフ「悲しみで涙を流す生物は人間だけ」がカットされていることにより、サトシの石化を解除するポケモンの涙についてやや説明不足になったように感じた。
まだ旧作をご覧になっていない方には是非試聴を薦めたい。

個人的にアニポケの魅力は感情を5文字以内で完璧に表現できるピカチュウ(大谷育江)と、人とポケモンを通訳できる唯一の存在ニャースだと思っている。
クローンポケモンとの戦いもピカチュウとニャースはそれぞれの立場から戦うことを避けている。

作中ではポケモンバトルがだいすきなサトシがポケモン同士が傷つけ合う光景に心を痛め、ついには止めに入る。
〝ポケモンが戦う〟ことに関してはポケモンバトルと相違ないのではないか?との解釈も可能であるが、
ポケモンバトルとは、ポケモンとポケモントレーナーが鍛えた技で勝つために競い合うことであるのではないだろうか。