オーケストラだった。
ちゃきちゃきと食器の音をまき散らし、会話は重低音。鉛筆の音が鳴り響く。
息子を良い高校に行かせるというシンプルな脚本ながらカメラワークと演出でここまで面白くなるのか。
シュールな画角としゃべりと美術が常に画面を支配し、逃さない。
誰も家族のことを考えてる人はおらず、「家族」という記号を演じているまさに家族ゲーム。
本音で話せる空間は車の中にしかなく、息子たちを親は「できちゃった」と称する。
家族の欺瞞に対する、松田優作のラストの奇行はある種、奇妙なカタルシスで爽快。
インテリに見せかけて、読んでいるのは小学生向けの学研の植物図鑑。
よく見れば怪しい家庭教師だと気づくのだが、成績が上がっているので、親は見向きもしない。
日常に潜む、怪しさが至るところに散りばめられ飽きない。
無関心さの象徴として、差し込まれたラストのヘリコプター。
事件が起きてもワイドショーのように消費して、家族は眠りに落ちる。
どう演出つけたんだろう。ほぼ全員が人間の延長線上に存在しており、間の取り方、息遣いどれも上手い。