喜連川風連

家族ゲームの喜連川風連のレビュー・感想・評価

家族ゲーム(1983年製作の映画)
4.0
オーケストラだった。

ちゃきちゃきと食器の音をまき散らし、会話は重低音。鉛筆の音が鳴り響く。

息子を良い高校に行かせるというシンプルな脚本ながらカメラワークと演出でここまで面白くなるのか。

シュールな画角としゃべりと美術が常に画面を支配し、逃さない。

誰も家族のことを考えてる人はおらず、「家族」という記号を演じているまさに家族ゲーム。

本音で話せる空間は車の中にしかなく、息子たちを親は「できちゃった」と称する。

家族の欺瞞に対する、松田優作のラストの奇行はある種、奇妙なカタルシスで爽快。

インテリに見せかけて、読んでいるのは小学生向けの学研の植物図鑑。
よく見れば怪しい家庭教師だと気づくのだが、成績が上がっているので、親は見向きもしない。

日常に潜む、怪しさが至るところに散りばめられ飽きない。

無関心さの象徴として、差し込まれたラストのヘリコプター。
事件が起きてもワイドショーのように消費して、家族は眠りに落ちる。

どう演出つけたんだろう。ほぼ全員が人間の延長線上に存在しており、間の取り方、息遣いどれも上手い。
喜連川風連

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