春とヒコーキ土岡哲朗

家族ゲームの春とヒコーキ土岡哲朗のネタバレレビュー・内容・結末

家族ゲーム(1983年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

現実離れしている様で、日常に潜む無関心という罪。

冷え冷えとした感じで始まり、家族の食事が、なんかグロい。食事している人間ってのをまじまじとうつされると、欲の塊に見えて気味が悪い。
不健全な家族の日常をぶっこわしに、船に乗ってやってくる松田優作。気持ち悪いと言われたら「おれだって気持ち悪いよ」と返し、淡々と仕事をする。歯に衣着せぬ異常な家族に対しても、全く下手に出ることなく、ただならぬ話しかけ方にも怖さ満天。ブレないところも人間味がなくて恐ろしい。
教え子の兄と談笑してり、恋人と過ごしたり、焦ったときはハンカチで汗を拭ったり、人間味ゼロではないんだが、度々出てくる食事シーンでも一人だけあくまでも動力源の摂取として食事する。

ブッとんでいるのは、家族での横一列での食事。
ここが「家族ゲーム」たる所以。一家揃って夕食を食べるものの、あくまでもその事実を作るだけ。誰もお互いの顔を見ていない。同じマンションの住人である女が訪ねてきた際、自己中心的な話を続ける女は、「自分の家族だけじゃなくて、他人の家族の心配もして」と逆ギレするが、この一家は自分の家族すらまともに心配しちゃいない。
横一列の食事に松田優作が入ると、狭くなる。食事中もガチャガチャして、家族の日常に異変を与えている。食べ物をブン投げ、攻撃しあい、めっちゃイカレた食卓と化す。でも、動きがめちゃくちゃなのに、何事もないかのような会話。
そのまま行くのかと思いきや、父が急にめちゃくちゃ度合いに対して怒鳴る。それが当たり前の世界じゃなかったんかい。優作が一家全員をボコる。そして食卓を持ち上げ料理を全て落とし、歪んだ日常を破壊する。

ここで終幕かと思いきや、まだ続く。母は、空中を飛び回るヘリの音を、何か事件でもあったのかと気にして一度窓を開ける。しかし、ひとしきりヘリの様子を見て窓を閉めたら、すぐに気にかけるのをやめて眠ってしまう。世界で起きてること、身の回りのこと、家族すらもゲームくらいの距離感にすることで、干渉せずに平穏を保っているようだ。