Jeffrey

サンタクロースの眼は青いのJeffreyのレビュー・感想・評価

サンタクロースの眼は青い(1965年製作の映画)
4.0
「サンタクロースの眼は青い」

本作はジャン・ユスターシュ監督による1966年の中編で、この度DVDを購入して初鑑賞したが傑作。ゴダールを始め、トリュフォー、ロメールなどのヌーヴェルヴァーグの巨匠たちが驚きの声を上げてジャン・ユスターシュの天才を決定づけた幻の初期傑作と、実験精神あふれる異色のドキュメンタリー2編を収めた作品集は、ゴダールからフィルムを提供され、ブレッソンとルノワールを標榜して撮ったユスターシュの野心作である。製作はジャン=リュック・ゴダール。主演のダニエルには「男性・女性」に出演していたジャン=ピエール・レオー、そしてフィルムはゴダールの「男性・女性」のものを都合したと言われる曰く付きの作品。また、カフェのシーンを撮影監督としてデビューして間もないアルメンドロスが担当し、まさに映画が新しい波と共にあった時代の息吹が伝わってくる内容となっている。


さて、物語は11月末のナルボンヌ。ダニエルはクリスマスまでに、流行のダッフルコートを欲しがっている。彼は一人暮らしをしている図々しい友人デュマとカフェ(89)に入る。彼らはよく本屋で万引きする。ダニエルは朝、市場は歩き、財布を落としたものを探す。彼はマルティーヌと言う女の子に気があるが、口説くのに失敗した。彼女は、時々ボクサーと言われている年上の男と外出する。ダニエルの内気の友人モリスはロゼットに気があるが何もできない。ある晩、ダニエルはモリスと一緒に女の子をナンパするが、結局逃げられる。毎年クリスマスの週にカフェ89でロト・カードを配る仕事がある。この街の大きなカフェのしきたりだ。ダニエルはカフェ89の常連達と世間話をする。写真家の男が、客と一緒に写真に写るサンタクロースに扮する男を2人、クリスマスまでの木曜と日曜に求めている。

報酬は1日千フランだ。ダニエルはその仕事を引き受け、翌日から働くことにする。六、七千フランになると彼は計算する。年末にカフェ89でロト・カードを配る仕事をすれば、二、三千フラン。1月1日にはダッフルコートが買える。だが、彼は夏にスクーターを買うためにやった煉瓦職人のバイトは1週間でクビになったことを思い出す。ダニエルはデュマとともにサンタクロースに扮し、街角に立つ。写真家とダニエルは通行人を呼び止めては、サンタと一緒の所を写真に撮る。やがてダニエルはサンタの扮装と言う口実を利用して、一緒に写真に写る若い娘たちの体を触るようになる。マルティーヌも彼と一緒に写真を撮る。サンタの扮装した彼を知り合いの誰かと間違えたらしい写真家の知り合いの若い娘と彼はデートするが、素顔の彼がしつこくキスするのを嫌がり去っていく。

まだクリスマスまでに2日ほど仕事する日がある。だが彼はもう飽きていた。ダニエルはカフェ89でロト・カード売る仕事を始める。2枚で50フラン、4枚で100フランだ。彼の売るカードが30枚。彼とファブリュスは帳場をごまかして余計に金を貸せいた。ダニエルは12月26日、ついにダッフルコートを買う。新年がやってくる。ダニエルは悪友たちと飲みに行く。酔っ払った彼らは「淫売屋へ 淫売屋へ」と叫びながら夜の街を歩く…とがっつり説明するとこんな感じで、フランスの地方都市ナルボンヌに住むダニエルの望みはダッフルコートを買うこと。いつも貧乏で悪友のデュマとカフェに溜まり、本屋では万引きをし、ときには娼婦を買うこともある。そんな時、クリスマスまでの週2日、サンタクロースの格好で通行人と写真を撮ると言うバイトが決まった…それらを淡々と描いた作品である。


「大人は判ってくれない」から成長したジャン・ピエール=レオーのグッドルッキングガイぶりを見れるのが良い。ロングコートに、すらりしたスタイルが抜群の彼のパリをただ歩くだけの描写が絵になる。この作品にはブレッソンとルノワールのことを考えているように感じる。ブレッソンなら「スリ」のように登場人物との関連で場所を重視したり、ルノワールでは語り口がそれである。この映画もナルボンヌが舞台となっているから後に監督が作った「ぼくの小さな恋人たち」の舞台と一緒である。
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