小松屋たから

新宿タイガーの小松屋たからのレビュー・感想・評価

新宿タイガー(2019年製作の映画)
3.6
新宿で何度か見かけて確かに気になっていたあの人。このドキュメンタリーは観たい!と思った。それもせっかく観るならやはり新宿で。

マスクで顔を隠してあの派手な衣装で…となると、目を合わせてはいけない人、絶対に何も話さない人、とか思ってたけど、なんと、びっくりするぐらい明るい人で驚いた。

こういう一見「アンタッチャブル」な人物について探るときは、何か大きな秘密を抱えている、ある信念や思想を隠し持っている、とか何か「闇」を期待してしまうし、この映画ではそこが掘り下げられていないという評価もあるかもしれないが、自分がスクリーンから受けた印象は、この人はとにかくすごく純粋で正直な人じゃないかな、ということだった。追いかけている側がどれだけ頑張ってもこれ以上は特に「答え」は出てこないのかもしれない。

映画の最後には「彼は秘密主義で…」という(洒落っ気もある)ナレーションがあったが、誰もが気になる「彼がタイガーになった理由」は、彼は隠しているのでもなんでもなく、映画の中でしゃべっているまんまなんじゃないだろうか。

映画の作り手がおそらくは、当初、もっと発露されることを期待していであろう、反権威、反戦という思いも確かにあるのだろうが、それ以上に、素直に、自分がその瞬間、やりたいと思ったことをそのまま始めて、そして、ずっと続けている人のように見えた。

腹が立つことがあっても、深刻には考えない。だって、人生はシネマと美女と夢とロマンだから。そう言って映画館の最前列に座る(でもあくまで礼節はわきまえつつ)。女性たちには面と向かって「あなたは美しい、素晴らしい」と、とにかく褒めまくる。

こんな「ちょっと得体の知れない人」が、いつまでも生きていける新宿であって欲しいと心から思えた。