てっぺい

宮本から君へのてっぺいのレビュー・感想・評価

宮本から君へ(2019年製作の映画)
4.5
【爆当たり演技映画】
毎分感情が暴発する全力キャラ。愛と魂をぶつけ合う演技でキャラをキャラ以上に昇華させる役者二人のそれは、もう体当たりを超えて爆当たり。そんな2時間もラストはほっこり落としてくれる充実度で、ドラマ未鑑賞なのに大満足。
◆概要
原作は新井英樹の同名漫画('90〜'94講談社「モーニング」連載)。出演は池松壮亮、蒼井優、松山ケンイチらドラマ版キャストに加え、井浦新ら。監督は「ディストラクションベイビーズ」の真利子哲也。
◆ストーリー
超不器用人間ながら誰よりも正義感の強い宮本浩は、先輩の仕事仲間、中野靖子と恋に落ちる。宮本は、靖子の自宅に招かれるが、そこに靖子の元彼である裕二がやってくる。宮本は「この女は俺が守る」と言い放ったことをきっかけに、宮本と靖子は心から結ばれるが……。
◆感想
まあ熱い熱い。まっすぐ過ぎる宮本と、反発し共鳴する靖子。なんだかイカヅチとイカヅチのとめどないぶつかり合いを見せられている感覚笑、ながら、宮本のまっすぐさに次第にほだされていく靖子と自分自身がいた気がした。まるで劇中の無骨なジャブを繰り返す宮本が、仇討相手と靖子の心と、そして観客の心の壁をぶち壊して飛び込んで来てくれるような、最後には自然ととても気持ちが熱くなれる映画だった。
◆熱い!
不器用ながらもまっすぐなキャラクターって、これまで幾度と描かれてきたけど、宮本が自分史上最高。何度も出る“負けてたまるか”のセリフは説得力の塊。“非常階段の決闘”は前評判の通りの見応え。全力疾走で職場に駆けつけ求婚してしまう宮本がまずキャラクターとしてとにかく熱い。

◆以下ネタバレ

◆池松壮亮
そして心震わされる迫真の演技。ごはんつぶをブチまけながら靖子に気持ちをぶつけるシーンは、笑えるのに何だか見入ってしまう。血まみれで靖子に“俺の子だ、二人とも幸せにしてやる”と連呼するシーンはもう感情のカオスながら、どこか穏やかな彼の表情に、もうえもいわれない涙が出た。
◆蒼井優
そんな池松壮亮を一部食ってる蒼井優。「彼女がその名を知らない鳥たち」にも見た、荒いセリフをまくしたてつつ、表情でも語る彼女の演技が素晴らしい。犯されたことを宮本に告白する、罵り泣く演技も素晴らしい。会社に来た宮本を攻め立てつつ、瞬時で周りを気遣う態度に変わる演技も何気にすごい。堂々とした脱ぎっぷりと、もう本番ではと思える程の濡場もさすが。体当たりというか、もう爆当たりと表現させてください。
◆メッセージ
エンドロールでは“宮本から”が外れ“君へ”のタイトルに。原作はもう30年前の漫画ながら、令和のこの時代にも本作が通じる熱いもの。情報過多なこの時代でも、考えすぎず、信念のままに突き進め。“宮本から”だけではなく、映画製作スタッフが伝えたい、そんなメッセージが本作にはあったように思った。

「血でも内臓でも使ってください」「無茶言わないでください」との救急隊員とのエンドロール直前の最後のやり取りまで、一つも手を抜いていない映画の本気度。大変だろうけど、幸せな家庭を築くだろう二人のその先を感じながら入るエンドロールが、何気に絶妙なタイミング。感情のカオスの連続ながら、最後にほっこり感を残して終わる、この映画の絶妙なしたたかさがありました。満足!
◆トリビア
主人公の「宮本浩」は、映画の主題歌を歌う宮本浩次(エレカシ)から取った(https://eiga.com/news/20190928/8/)。
真淵拓馬を演じた一ノ瀬ワタルは、原作の巨躯を再現するため、2カ月で30キロも増量・肉体改造した(https://eiga.com/movie/90564/special/)。
他のレビューもあげてるのでよかったら↓
https://www.instagram.com/teppei_movie/
てっぺい

てっぺい