小松屋たから

やっぱり契約破棄していいですか!?の小松屋たからのレビュー・感想・評価

3.7
イギリスらしいブラック感もほどよくまぶした気楽なコメディ。人がポンポン死ぬので、眉をひそめる方もいるかもしれないが、「キングスマン」のようなグロさは無く、もろもろがスマートにこなされていくので、まあ、大丈夫。約90分と尺も短いのでちょっとした時間潰しには最適。

自殺したいのにできない青年と、ノルマ達成まであと一人という老いた殺し屋。この設定がすべて。その後、邦題のまんま、「やっぱり死にたくなくなりました」「どうしてもお前を殺さないと俺の命が危ないんだよ」というドタバタに陥ることも、ほぼ誰もが予想するであろう展開だが、まあまあテンポ良く進んでいくので自分は退屈することは無かった。また、男二人に関わる女性陣の愛情や生き方もおしゃれ。とにかく登場人物たちがみんなキュート。

派手なアクションや大規模CGもなくアイディア勝負、という意味では、日本の自主映画、単館系映画も、若者の都会での挫折、DVや虐待、メンタル問題、ホラー系ばかりではなく、こういった路線も目指して欲しいな、と思う。

昨年の「カメ止め」、そして今年の「メランコリック」あたりが、この映画の水準ぐらいに演技も撮影技術も洗練されていたら、そもそも英語作品では無いという弱みはあるにしても、もっともっと世界中でビジネス的に戦えたかもしれない。

もちろん、本作には元々実績のある役者陣が揃っているし、お金もそれなりにかけているだろう。そして日本人は死への向きあい方がもっとウェット。でも、新たな小規模邦画のアイディアがこの映画の近所に転がっている気もする。だから余計なお世話ながら映画監督を志す若者たちにぜひ観て欲しいと思った。