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仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーションのsanbonのレビュー・感想・評価

3.6
次回の「ゼロワン」単独作に期待が持てるクオリティ。

「令和」最初の「仮面ライダー」にあたるのがこのゼロワンであるが、TV本編もこの重要な一作に並々ならぬ意気込みを以て現在放送中である。

まず、大きく変わった点としては大幅な"予算の拡大"だろう。

これにより、物語の構成が「平成」シリーズなら必ず1エピソードが"前後編"で展開されていたのに対し、ゼロワンは基本的に"1話完結"形式で進行されるようになった。

これは、単純計算で本来なら30話まで費やしていた展開を僅か15話分で行う事を意味するから、純粋に物語の"濃密度"が全然違うし、正直間延び感があった平成シリーズよりもストーリーのテンポは格段に良くなった。

そして、予算が増えた事により画面上の演出も明確にド派手になっている。

平成シリーズに比べてCGが多用されるようになった事でより動的な画作りに力が入っており、生身の演技だけでは実現出来なかった表現を比較的制限なく演出可能になったと感じる。

恐らくこれまでは予算の都合上やれなかった事を、今作では目一杯やれているように感じて、作り手側の心情も察すると観ていてとても気持ちが良い。

また、スポットの出演陣も明らかに豪華になった。

1話のゲストが「なかやまきんにくん」だった時は不安しか感じなかったが、それ以降もTVでよく観る中堅層が次々に登場した為、演技面の安定と画面上の華やかさは、これまでとは一線を画すものを感じるようになった。

このように、あらゆる面から使えるお金が増えた事は明白であり、それを惜しげもなく行使した作品と言えるのがこのゼロワンなのである。

更に、スーツアクターも世代交代を済ませアクションやカメラワークにまで新しい試みがふんだんに盛り込まれているのだから、映像を観ているだけでも毎週楽しませて貰っているが、それだけでなく特に脚本がしっかり面白いのがなによりいい。

今作の題材には「ターミネーター」という偉大なお手本があるから、それを下敷きに「企業戦争」や「お仕事もの」の要素をミックスしオリジナリティを保ちつつ、大人でもちゃんと楽しめるよう陰謀や伏線などもしっかりと設計され展開されている為、先が気になるストーリーが毎週練り上げられている。

ゼロワン単体で見ると、個人的には令和から仕切り直しとなるライダーシリーズにも、一層の期待を持てるスタートであると感じる為、非常に印象がいい。

そして、今作はそんなゼロワンの初の劇場版であり、平成最後を飾る「ジオウ」の最終作でもある。

内容としては、ゼロワンの"エピソードゼロ"のようなストーリーで、意外にもしっかりと脚本は練られていた印象であったが、やはりジオウが絡む事で起こる"パラレルワールド"の世界観はどうやっても異質でしかない。

まあ、異質だからパラレルなのでこれはもう性質上仕方のない事だから、これに今更とやかく言うつもりはないし、それを差し引いても今作にはこれまで慣例化していた、"精神論"や"感情論"で全てをひっくり返すお粗末極まりない展開をしっかり廃していた事に非常に安堵した。

TV本編の出来の良さを観てきた分、脚本力の向上にも期待を寄せていたから、ここが裏切られなかったのがなによりの収穫だったと言える。

もちろんツッコミどころがなくなった訳ではないが、"歴史改変"と"タイムトラベル''という癖の強いSF要素を基本とするジオウが居てはしょうがない事だったと目は瞑れるし、逆にゼロワン単独の映画になった時に真価が発揮される筈だと更なる期待を持てるクオリティだった事は実に喜ばしい事であり、これからの仮面ライダーシリーズに希望が持てる佳作となっていた。
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