MasaichiYaguchi

おかあさんの被爆ピアノのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

おかあさんの被爆ピアノ(2020年製作の映画)
3.9
母が祖母の被爆ピアノを寄贈したことを知ったことから始まるヒロインで大学生の江口菜々子のルーツ探しの旅は、彼女と共に旅をする我々に広島の原爆のこと、被爆二世のこと、そして当たり前のように享受している平和について考えさせてくれる。
モチーフとなっている「被爆ピアノ」とは、爆心地から3キロ以内で被爆しながら奇跡的に焼け残ったピアノを指す。
本作は被爆二世の調律師として全国に被爆ピアノの音色を届けている矢川光則さんの実話を基にしたオリジナル映画。
この矢川光則さんを佐野史郎さんが、そして矢川さんを頼り、ルーツ探しのアシストをしてもらう菜々子を「AKB48」の武藤十夢さんがピアノの演奏を含めて演じている。
本作ではシューベルトの「アヴェマリア」、ベートーヴェンの「悲愴」をはじめとするクラシックだけでなく童謡に至るまで「被爆ピアノ」で披露されていく。
その音色は今までとは違う感慨を喚起しながら心に響いてくる。
被爆から75年を迎える今、新型コロナウイルスが席巻している最中でもキナ臭さが漂うこの世界、改めて原爆を含めた戦争について考え、ピアノと同様に維持しようと努力しないと損なわれてしまう平和について見詰め直す機会かもしれない。