カニゑモン

ジョナサン ふたつの顔の男のカニゑモンのレビュー・感想・評価

3.3
一言でいうと、鑑賞後今まで感じたことのない哀しさに包まれた。

主人公への同情でもなく自分の経験と重なった訳でもない、この感覚はなんだろうと考えたが答えが出ない。

私にとってアンセル・エルゴートは、役者ではなくDJでお馴染みだった。"Fault in our stars"(邦題:きっと、星のせいじゃない。)を5年前に飛行機で観た際、役者も出来るのかと感心した記憶がある。本作では彼の表情にフォーカスしたシーンがかなり多いので、演技力が試された良い作品だと思う。実際とても巧妙な感情表現をしていて惹き込まれる。

ストーリー展開に派手さはない。スリラー映画と謳うほどドキドキしたり恐怖心に煽られることもない。なので広告の仕方を間違えているのではと思う。もっと繊細で切ない内容なのに。

ほとんどのシーンが自宅内で繰り広げられるが、その部屋がまた無機質で生活感を排除し病室と大差ないほどにシンプル。ここまで無駄を省く徹底ぶりはすごい。成人前はどう過ごしていたのか気になってしまう。これは鑑賞者に他の要素ではなく2人の感情や本質的な部分を注視して欲しい意図があるのだろうか。どちらにせよ私はこの撮り方や話のまとめ方に新鮮味を感じた。