ノルウェーブラックメタルという音楽物映画の中でも更にニッチな題材だけど、映画作品として非常に良く出来ていると思う
おそらくメタルに接点のある人ばかりが観るだろうけども、逆にメタルを知らず「実話ベース」という情報のみで観た方が衝撃度が大きいかもしれない
監督も元バソリーのドラマーということで一連の音楽関連の描写も安心して観られる
ここからネタバレ
ロックバンドは少なからず反社会的志向を孕むものだけど、勿論メイヘムも例外ではなくそれは内向きで陰湿な方へ向いてしまう
反キリスト、悪魔崇拝、極一部ではナチズムへの傾倒、などがブラックメタルの背景にあるが、ノルウェーのその時代においては誰が、どのバンドが過激なのかの競争が激化していってしまった
そしてそのチキンレースの先には様々な出来事が起きることに
過激行為を率先したり煽ったりとヴァーグばかりに責任を押し付けている感があるが、実際のところはどうだったのだろうか
原作も偏った視点からという話もあるし、映画なので脚色部分も少なくないはず
メンバー内でも音楽活動以外の部分で温度差がある描写もあり、メインメンバー以外は関心が薄いのはバンドあるあるで面白い
この映画は、伝説のバンドメイヘムの軌跡でもあるし、サタニズムに傾倒した若者の青春譚、そして実録マーダー映画でもある
彼らの当時の濃密で刺激的な時間を追体験させてくれているような感覚は貴重だと思う
自分としては、関係無いところで勝負せずにその情熱を"音楽"に向けて欲しかったというのが本音だけど、心の片隅には共感できる部分も少なからずあるのも事実
パンフによると、劇中ダサいバンドとして挙げられたスコーピオンズは最初モトリー・クルーにしたかったっぽい
モトリーには断られたらしいが、スコーピオンズは懐が深いね(笑)