おばけシューター

ロード・オブ・カオスのおばけシューターのレビュー・感想・評価

ロード・オブ・カオス(2018年製作の映画)
4.3
面白い!かなり好きでした。もともとヨナスアカーランドとメタル、あと音楽映画が好きだったので、間違いないと思ってましたが…。だらだら書いてたら長くなってしまいました。さーせん。

突然ですが、音楽のジャンルっていくつかタイプがありますよね。
ひとつは音楽性による区分けで、例えばジャズはスウィングやシンコペーション、それを含むアドリブなんかがあってこそジャズで、別にアコースティックでも電子音でも日本やろうと北欧でやろうとあまり関係ありません。

次に楽器や地名、時代など音楽性以外の特徴でわけたもの。例えばボカロって音楽性の傾向もあるかもですが、ボーカロイドを使用しているのが何よりなわけです。(もちろんこれらの区分けを跨ぐものも存在します。モダンジャズとかデトロイトテクノとか)

そして、音楽以外の動機があるジャンル。
アニソンとかV系、アイドル、クリスマスソングといったところでしょうか。何を隠そう本作のテーマであるブラックメタルも、ここに当たるわけです。

音楽のジャンル分けなんて商業的な目的に寄るところが多く、上のように一貫性もないので語る意味もあまりないと思いますが、ブラックメタルというジャンルは特殊な意味を持つと思ったので、このような話をしました。

本編でもあったように悪魔崇拝やキリスト教の否定、10万と20歳くらいありそうなコープスペイントなど音以外の要素が他より重視されるジャンルと解釈でき、これはメタルに限らず音楽ジャンルとしては結構異端なのかなと思います。
(メタル自体が悪魔みたいな歌詞とか黒い服ばっかじゃねーかと思うかもしれません。傾向は間違いなくありますが、ドレスをきた女性がボーカルだったり、忍者の格好したメンバーで構成されてるメタルバンドもあり、それであっても音楽性がメタルならメタルです。それが許されるメタルは、むしろかなり自由なジャンルです。)

個人的な話でスミマセンが高校ぐらいまでは結構メタル聴いてて、CryptopsyやMeshuggahといったテクニカルなバンドが好きで、
まぁ所詮”ポーザー”の身ではありますが横目で見てきた限り、メタルのファンって基本暗くて友だちが少なく日常に退屈したガリガリの厨二病なんですよね。もちろん私もそうでした。個人の意見ですよ🤘

そんな友だちいない僕らの数少ない救いの道であるが故に、音楽性だけでなく思想やスタイルも重視されるんじゃないでしょうか!レコードショップの地下に安息の地獄を作りだした事からも、そのことがわかると思います。



というわけで本編。
Opethのように長いイントロだね。

最初の印象は、本当にメタルヘッズのことをよくわかってる!ということ。これは相当取材も重ねたんでしょうが、監督のヨナスアカーランドは明らかにメタル好きですね。聞けば、ユーロニモスと個人的な付き合いがあったらしい。やはり彼が作るべき作品だった。

メンバーに先立たれたり、自分を追う立場だったやつが次第に強大になっていったりという人生はあまりにも映画的で、観ているうちにもはや事実かどうかに興味がなくなっている自分に気付く。
しかしながらやはり現実の話であることはユーロニモスのどこまでいってもリアルなメタラー像でハッキリと伝わる。

そう、上記の通り彼はメタラーの典型で、デッドが例外であってほとんどの人はいい人なんです。ラウドパークもフジロックより民度高かったですからね!(ちなみに民度最悪だったのはベイビーメタルのライブでした。皮肉っすね)
今はどうかわかりませんが、メタルはファン同士の連帯感が非常に強く、モッシュピットで倒れたひとを起こしてあげる早さは最速、子どもだった自分を差別せず肩を組んでくれたり、今は禁止でしょうがクラウドサーフ(客の上に乗りステージ前まで運ばれる行為)しようと前の人の肩を借り這い上がろうとした時に後ろにいた人たちが一斉に集まって押し上げてくれて…アレは本当に最高だった。あの時の皆んな本当にありがとう🤘

そんなユーロニモスは、いちファンであったクリスチャンの名前を覚えていたり、自分の食べてたケバブをあげようとしたり(やるか?普通)とコープスペイントしてても隠しきれない優しさの溢れる彼でしたが、やはりあぁいうジャンルの真のカリスマはネジの飛んでるやつなんだろなぁ。特にスタンスが重視されるジャンルにおいては、そんな人物が神聖視(逆か)されるのは世の常で、それに憧れてしまった。
本質的には、ユーロニモスとヴァーグは近い人間なんじゃ無いかと思う。(デッドは別格ですが。あんな人間そうそういてたまるか!)
2人は、なりたい自分を演じてたように思う。違いはと言うとそれに気付いてるか否かくらいで、ヴァーグですらまともな大人(記者)からしたらチョロい子どもだったんだよなぁ。

最後はとうとう取り返しのつかないことになってしまいますが、「友だちだろ」のセリフでヴァーグの表情が一瞬悲しげになるところは切ない。

アンセムのようなシガーロスの曲を添えた、「後悔はない。俺はメイヘムを作った。お前は何を成し遂げた?」のセリフは、友人だったアカーランドからの餞の言葉でしょう。
しかし、その時彼がそんな想いで、せめて後悔のないまま死んでいったと願わずにはいられません。
あのあと彼は間違いなく、地獄へ落ちたわけだから🤘

おしまい。