半兵衛

人妻拷問の半兵衛のレビュー・感想・評価

人妻拷問(1980年製作の映画)
4.0
低予算ポルノゆえのチープさは否めないものの、それでも暴行され自殺した妹のために暴行した男三人ではなく彼らの妻へ報復することで自分と同じ気持ちを犯人に味わわせんとする主人公の歪んだ愛とその結末を丁寧に描いたドラマはたかがでは済まされない出来栄えに仕上がっており唸った。

冒頭の暴行シーンから団地で力無く項垂れる下元史朗へと飛んだり、第一の復讐シーンを敢えて省いたりと省略の効いた語り口や主人公の目的をぼかし徐々に過去を明かして登場人物の心情を浮かび上がらせるテクニックが上手くて後年テレビドラマや映画で活躍する西岡琢也氏の脚本の上手さが光っている。そして省略した分第三の復讐する相手と共感してしまい、それに戸惑う男と受け入れる女からの犯人が出現してからの予想外な展開が重厚に描かれその完成度にエロ目的を忘れてしまうほど。

脚本を丁寧に演出した高橋伴明監督の手腕や緊迫感のある映像を団地の一室という狭い舞台でやり遂げた長田勇市の撮影などスタッフの技も素晴らしく、特に団地の一室で何もない部屋の空間にパンするとそのまま移動する下元史朗を追うショットに繋がっていく演出には感嘆してしまった。

妹の復讐に燃えながらどこかやるせない下元史朗、彼に殺されそうになりながら境遇に共感していく丘ナオミ、ひたすら下衆な丘の夫で暴行犯の大杉漣三者の演技はいずれも見事でドラマを大いに盛り上げる。

愛する者を失い残された哀しみと怒りを謳う下元史朗の心情が思わぬ形で成就されていくラストに心を打たれる、そして冒頭の下元の台詞が生かされる丘ナオミの最後の台詞に自分の境遇を鑑みてしまうはず。
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