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ボーダー 二つの世界のKEKEKEのレビュー・感想・評価

ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)
5.0
- おおかみこどもの雨と雪のif
- 超疲れる
- この疲労感は私たちが保身のために引いている常識のボーダーの内側へ異物を招き入れる際に支払う代償
- 普段感じている美しさという価値観について疑問を投げかけ、自分とは一体何なのか問いただしてくる
- セクシュアリズムの表現方法としてかつてなかった領域に挑戦しているチャレンジングな作品

- この常識の定義はいつ誰が作ったんだろうという問いは、誰もが一度は持つ素朴な疑問だろう
- 他の人と同じように生きることはできるしそうしているけれど、同時にあと一歩踏み外すだけでこの社会は私を即刻爪弾きにするだろうなということも容易に想像できる

- 理性に対する野生への誘惑みたいなものは普段から生活の至る場面に忍び寄ってきて、この場所が本当に自分にとってのホームなのかどうか折に触れて問いかけてくる
- 逞しくも可愛らしい動物たち、ふわふわの苔の上を裸足で走り回り、冷たい湖で自由に泳ぐ
- 社会の犬になるか、自分の居場所を見つけるか
- そしてもし、新しい世界の存在を知ってしまったとき、常識を捨ててそれを受け入れることができるか
- 人と違うことは優れているということだ、人の言葉なんで気にするな、というありふれた美しいセリフを、最もシンプルに且つ重厚に扱えている作品だと思う

- 結構なファンタジーなのにすーっと頭に入ってくる
- それは多分徹底的にリアリティを追求して脚本が練られているからだし、何より俳優の体当たりの演技の賜物だと思う

- 音楽は基本アンビエントで、セリフも最小限に抑えられている
- その分無表情で感覚が鋭い主人公の感情の機微が伝わってきて、テレビの煩さにも共感できる、主人公に本来どういう世界が見えているのか擬似的に体験することができる

- 特殊メイクがとにかくすごい、というか顔ってすごい
- 猿人を想起させるビジュアルは、実際ネアンデルタール人をモチーフにして作られたらしい
- 俳優さんの演技が凄すぎるのも相まって、最初は特殊メイクだと気づかなかった(なんなら最後まで確信は持てなかった)

- 手持ちだからか画面が終始細かく揺れているんだけど、それがだんだん心地よくなってきて、整えられていないものの美しさを画面全体を通して感じられる
- 修正されているシーンは劇場ではそのまま流れていたらしいので、いつかかならず見たい

- 商業的な成功を視野に入れてるとは到底思えないような尖り方をしてるんだけど、北欧の映画業界はこういう芸術作品に対してめちゃくちゃ寛容だったりするんだろうか
- 熱量もクオリティも凄まじい、怪物作品だった
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