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ボーダー 二つの世界の青ののレビュー・感想・評価

ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)
3.5
【 ムーミンの親戚 】

多毛症、額や顎の変形、尻尾、両性具有など…先天的な染色体異常による変形は現代でも少なくないし、中世の狼男や吸血鬼伝説は、もしや現代医学からかけ離れた無知から成った偏見の結果なのでは?って思ったり。

それも、あくまで「見た目」の話しで、匂いで他人の感情や動向を察知できるとなると、それはファンタジーなのかもしれない。
とは言え、その「見た目」の部分において、かなり超低空を攻めた作品。

そう言った部分が全体を占めているし、人によっては苦痛でしんどい表現が多分にあるので敏感な方は気をつけた方が良いかもしれない。


個人的には【 以下 】で説明していますが、新しいベクトルの北欧神話/トロール伝説だなって捉えました。

で、もう一回見たいか?って聞かれたら
「んー、大丈夫です」
って感じ。


【 以下、事前情報無しで視聴したい方は読まないで下さい 】






















—ちゃんとしたトロールの話しだった—

日本のお伽話に鬼とか妖怪の出演が多いように、北欧の創作物には決まってトロール(トロル)が登場する。
映画なら『トロール・ハンター(2010)』とか『トロール(2022)』等、まるで「土地の味ならコレ!」って勢いでやたら出てくる。
極めつけは日本人も大好き『ムーミン』だろう(現地のムーミンショップは日本人客が殆どだとか)。

で、トロルにも小人型と巨人型がいるようで、元は北欧神話『霜(しも)の巨人族』から登場し、なんやかんや分岐したようだ。
小型が『ムーミン』なら、大型は映画のそれなのかな?
で、今作はさらに人間サイズに分岐された。

斬新でいながら意外にも今作に登場するトロルは、神話や伝承の性質を踏襲していた。

・人間の多い土地を嫌い長く居座らない

・雷神トールの雷の戦鎚(トールハンマー)で攻撃されたトラウマがあるので雷が大嫌い

・人間の子供とトロルの子をチェンジリング(取り替え子)する


※他にも太陽光に弱く朝日を浴びると石になる(指輪物語)という弱点もあるが、これは今作では採用されていない。


つまり、北欧のお家芸である『トロール伝説』を人間サイズでやったら、こうなっちゃったって感じでしょうか。
「存在している」前提で、実は既に人間社会に紛れ込んでいて、取り替え子よろしくいつの日か人類と入れ替わってやろうと。

伝説では、良い事をしてくれた(なにかしら約束を守ってくれた)人間には、必ず恩に報いる健気な側面もあると言う。
しかし、一度でも裏切ると恐ろしい仕返しをするのだとか。

もしかしたら、今作に登場するトロルの一人ヴォーレは過去に裏切られた経験(日常的な迫害ではなく、伝説にある契約的な)があるやもしれない。

—〆—
ジェンダーやルッキズム、いわゆるマイノリティが抱える孤独を題材にしているかのようにも見えますが、個人的にはそんな風には感じとれず。

なにかしらの揶揄暗喩ではなく、単純に「現代社会にトロルが紛れていたら?それが自分だったら?」の悲哀の物語と受け止めました。
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