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ボーダー 二つの世界のsiloのレビュー・感想・評価

ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)
3.0

久しぶりにレビューを再開。
「モールス」原作者の短編を基にしたファンタジー映画。

開始早々主人公ティナのそのメイクに度肝を抜かれかけるも、ドキュメントテイストを意識しつつも、不穏さを維持したカラーリングがキャラの造形の派手さを中和、リアリティを維持していて感動。

ストーリー的には、ファンタジー世界の種族の分かり合えなさを僕ら人間ではなく、彼らの側から描いてる。
それがなんとも新鮮で、不気味である一方で、彼らが実際にいるかもしれないという想像の下、その感情を辿ることは、なんとなく神話を読んでいる感覚に近いのかも。

僕ら人間が加害者で、彼らは被害者という状況で、視聴者はバイオレンスを侵す方の立場として物語に向き合っていくことになる。

ティナは人間的な暮らしの中で、孤独を抱えつつも最終的には亜人である自分らしさと向き合う決意をしているが、人間に対して希望を捨ててはいない。
ラストシーンが秀逸で、ある種の僅かな希望を感じさせつつも、ティナの下には、袂を分かつことになる、別の考え方を持つ同じ亜人との間にできた子供が残る。
きっとティナはこれからも絶え間ない葛藤と絶望と僅かな救いの中で生きていくことになるのだろう。
そんな余韻をしっかりと刻んでいく単調に見えて練られたストーリー構成に純粋にすごいなという感想。

彼らが林を疾走するシーンはライアンマッギンレーを想起させるし、まるで「その瞬間こそが全て、私は今を生きている」な感じでこころが震えた。どーやって撮影したのかな。

時々目をそらしたくなってしまうような演出はさておき、素敵な作品でした。
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