こにたくさん

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイのこにたくさんのレビュー・感想・評価

5.0
小4の頃に友達の勧めで読んだ小説、それがついに、ついに映像化された。
富野由悠季氏は、この小説を映像化するつもりはないとずっと言っていたが、色々変化があったのだろう、ついに、ついに映像化された。
閃光のハサウェイという全3巻の小説は、富野由悠季氏が、本気で小説を書こうとして書いた作品だ。
逆襲のシャアの小説版の続編ということになる。
小説として成り立つちゃんとしたものを本気で書こうとして書いた作品なので、氏の思い入れも一際強い作品なんだと思う。
アニメ化を前提としない小説作品ということは、スポンサーの意向、アニメ化したときの都合なども何も考慮していない、純粋に氏が書きたいように書いたガンダムなのだ。
ある意味、これこそが、何の混じりっけも無い本物のガンダムと言っても、もしかしたら過言ではないかも知れない。
監督は、虐殺器官の監督をした村瀬修功氏。
虐殺器官もとても面白かったので期待していたが、期待通り、いやそれ以上の、もはや完璧と言っても良い映像化だった。
これなら富野由悠季氏も大満足だろう。
虐殺器官もハリウッド映画のような硬派な作りで、アニメというよりも実写に近いというか、そういうリアリティある画作りだったが、ハサウェイもその系統にある。
この作品をそのままトレースして実写化すれば、ハリウッドなら実写版をすぐに作れると思う。
それくらいのリアリティがある。
だから、アニメファン向けではないと思う。映画ファン向けの作品になっている。
しかし、ガンダムの基本知識はある程度必要になってくる。
なぜテロをする必要があるのか、基礎知識が無いと、まずこの理由が分からずに戸惑うことになる。
そういう意味で、単体として成り立っている映画ではないが、それを言ったらマーベル映画なんかもそうだろうから、それはいいだろう。
基礎知識を手っ取り早く入れるには、初代ガンダムの三部作、それと、逆襲のシャアを見れば良い。本当はテレビアニメ版Zガンダムも見た方が良いとは思うが、あれは何せ長い。
逆襲のシャア以降の宇宙世紀ガンダムとしては、既にユニコーンが存在する。
ユニコーンはアニメ版の逆襲のシャアから続いている話のはずだ。
それでははたしてこの作品はどうなのか?他のアニメ作品と連動させることを意識しているのか?それとも原作小説の通り、ベルトーチカチルドレンの方に繋がっており、ユニコーンへの連結は考慮されていないのか。
私が今回見た限りだと、小説版に準拠していると思う。つまり、既存のアニメ作品との繋がりは意識していないのではないかと思った。
ただ、それだとスポンサーがうるさそうなので、今後どうなるかは分からないが、あるキャラのセリフ的に、ベルトーチカチルドレンからの系譜としか考えられないのだ。
まあ、それは別にどっちでもいい。映画オリジナルの展開になるならなるで、それも良い。そう思えるほどに、作品の出来が良すぎた。
閃光のハサウェイは、ギギアンダルシアという18か19歳くらいのヒロインキャラがとても重要な位置にいる。
これまでのガンダムヒロインには居なかった、これもやはり小説だからこそ出すことができた設定のヒロインと言える。
私は小4でギギに出会ってから、ギギにぞっこんなのである。
この手の女性に本当に弱い。
今回の映画では、ギギがとても上手に映像化されていた。ギギの描写が映画化が成功と言えるかどうかの重要なポイントと言っても過言ではなかったほどだが、ちゃんとギギを描けていた。
18か19くらいの、少女と大人の間の無邪気な妖艶さ、しかし決して下品ではなく、やってることがどうであれ高貴さが滲み出てしまうギギの魅力がしっかり描かれていた。
それに加えて、戦闘の描写、これが実に見事だった。
巨大ロボット同士が戦うリアリティ、これはユニコーンでも描ききれていなかったものだが、閃光のハサウェイは見事に、架空の兵器同士の戦いが、まるで本当にこの世にモビルスーツが存在するかのごときリアリティで描かれていた。
モビルスーツの巨大さ、重さ、乗り手に掛かる負荷、いやもうとにかく見事な戦闘シーンだった。
ペーネロペーとクスイーのデザインも今回新たに描き起こされたものだが、小説版のイラストにより近い、それでいて新しいデザインになっておりとても良かった。
恐らくこの作品、ガンダムF91の描写にも相当影響を受けていると思う。
アニメ版でそのような描写があったかは覚えていないが、小説版では、ビームの閃光から僅かに弾け飛ぶ細かいビームのカス、あれ一欠片でも十分な破壊力を持つということが説明されていたが、この作品でもビームのカケラが金属を溶かす描写が描かれていた。
市街戦でモビルスーツを運用することの危険性が、F91で書かれていたように描かれていたのだ。
ちなみにモビルスーツは核融合炉がエネルギー源なので、下手な壊し方をすると核爆発が起こってしまう。
多分その辺のことも考慮した戦闘描写になっていたと思う。
いやそれにしても、本当に見事な映像化だった。
早く続きが見たい。
こにたくさん

こにたくさん