キラリ

よこがおのキラリのネタバレレビュー・内容・結末

よこがお(2019年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

“違うんです”

犬になる筒井真理子の衝撃たるや。ただものではない存在感に圧倒された。

「人間の多面性」をテーマに掲げ、深田晃司監督が、筒井真理子を筆頭に実力派俳優陣たちと創りあげた映画が本作『よこがお』。人間って、もちろん表と裏の顔、本音と建前、自分の知る自分と他人の知る自分があるわけで、どれが本当で嘘かなんて本人にすらわからない。相手を買い被っているかもしれないし、誤解しているかもしれない。ある時は気を許してこっそり秘密を打ち明けてみたり、またある時は警戒して疑ってみたり。生きるって、その繰り返しなんだなぁってしみじみ思う。

本作品では、特に、筒井真理子と市川実日子が、微妙な心のゆらぎを見事に演じきっていて、さらにそれを引き立てる演出も素晴らしかった。(後半の洗車シーンやクラクションの使い方も◎)

また、この映画は、現実と妄想の世界がシームレスに描かれた作品なのだが、それらの区別がつかないところが、興味深いポイントである。

単純に、不条理に人生を奪われた悲劇のヒロイン市子の基子への復讐劇ともとれるし、その復讐劇がすべて市子の妄想であったとも受け取れる。私はリサ(市子)と和道のデートからラブシーンまでの一連の流れが、市子の妄想(=復讐劇すべてが妄想)ではないかと勝手に解釈。結局のところ、市子⇒基子ではなく、むしろ基子⇒市子への陰湿な復讐劇(独占欲や失意から?)だったのでは?週刊誌の記事や車のインクも基子が絡んでいるのではないかと。完全に憶測なのだけれど。

さらに、市子が犬になる衝撃的なシーン。この場面は、怒りや恨みを言葉にすることができない市子のフラストレーションが爆発したシーンではないかと思っている。犬のように心のおもむくままに感情をむき出しにしたいという市子の思いが、劇中ではああいう形で表現されたのではないか?

それにしても、時間軸がシャッフルする映画なので、かなり頭使ったなー。観る人によって解釈がわかれるのも、この手の映画の醍醐味。
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