YokoGoto

よこがおのYokoGotoのレビュー・感想・評価

よこがお(2019年製作の映画)
4.4
<憎しみも、悲しみも、私の心の中にあるもの>

深田晃司監督作品は、見終わった翌日の方がつらい。
カンヌで受賞した『淵に立つ』もそうだったが、深田監督が描く主人公の心理描写は、観る人の心をざわつかせ、身の置き所がなくなるような感覚に陥らせる。

本作『よこがお』もそうだ。

どこにでもいるような主人公。
誰でも巻き込まれてしまうかもしれない事件。

その物語は、誰もが、他人事と思えないくらいのリアリティが感じられる。
残酷であればあるほど、背筋がゾッとすると同時に、思わず『もしも、自分だったら...』と恐ろしくなってしまう。

深田監督の描く『よこがお』の主人公である市子の運命は非情だ。現在と過去が交差するように事件が展開していくのだが、かつての市子と今の市子が、常に交互に現れるため、残酷な運命に、いかに市子が壊れていくかを見せつけられ、いたたまれなくなる。

人の心は決して強くない。
ほんの少し、ボタンをかけちがえただけで、簡単に壊れていく。憎悪も悲哀も、荒れ狂う海の中で渦巻く渦のように、何度も何度も市子の心をかき乱す。しかし、これらは、すべて市子の心の中で起きている。

市子の心は、誰にも見えなければ、誰にも支配されない。
すべては、市子の心の中で起きていたこと。
YokoGoto

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