Qちゃん

The King and I 王様と私のQちゃんのレビュー・感想・評価

The King and I 王様と私(2018年製作の映画)
4.1
ケリーオハラと渡辺謙による、リバイバル版「王様と私」のブロードウェイミュージカルをロンドン公演した際の録画。本作でケリーオハラはトニー賞主演女優賞受賞、渡辺謙は主演男優賞ノミネートとなった。

来日公演の際に子供たち生まれたてで観に行けなくて泣きを見た作品だったので、録画があって家で観られることに猛烈感謝。U-NEXTまじサンクス。←最近こればっか

基本ユルブリンナー版と同じで、なんなら衣装も被ってたけど、ユルブリンナーよりお茶目さと知的さと一生懸命感があった気がするのは、渡辺謙さんに対する贔屓目かしら。。?😅

ユルブリンナー版は比較的大真面目だけど迷いなき野生児に見えた中、渡辺謙版はメンタル面では甘やかされてきたけど、迷いがあるが故に凄い努力して勉強して、欧州列強の隷属国にならないよう、無い情報とリソースをかき集めてなんとかしようと必死に対応して苦悩してるのがよく見えた。

そしてお茶目さが半端ない。ダーッと来たけどエドワード卿と踊るアンナ見て同じスピードで踵を返した所や、張り合って“Yes, better be going in, Anna”.で腕出してから”こっち来いや”って頭クイッてするシーンめっちゃウケた!😆ユルブリンナー版は時代の東洋偏見も手伝ってか客観的にコミカルな方向に振ってたけど、渡辺謙版は、自身のユーモアと品の良さが滲んでるのがイイ。

大沢たかお出てたの知らなくてビビった。デカいな彼。威圧感も宰相感もあって、王毅将軍の名残を見た。まあストレートな役柄だったけど。

「王様と私」関連作品群の中で、今までで一番王の第一夫人が素敵に見えた。知性も配慮も女王としての品格と強さも持った、本当に素敵な女性なのがヒシヒシと伝わってきた。そして本当に王を愛していることも。。愛する王の成功のために、御心を乱さないよう、煩わせないよう、貢献できるよう、密やかに活躍している様が素晴らしい。王の死を看取るシーンとか、もはや心から嘆き悲しむ彼女が愛おしい。

欧米のミュージカルでありながら今回は、「東洋側からしたら、西洋に侵略されないよう、西洋を手懐けるために近代化というか西洋化を装って見せているんですよ」と、はっきり西洋文化•西洋史自体にも疑問符を呈したアプローチを取り込んだのが現代解釈的。まあ明治維新で鹿鳴館もある日本人には馴染みの感覚だわね。

主演女優賞獲ったケリーオハラ、人生の恋愛ステージは亡くなった旦那に使い切ってて、王とはもはやキツめの冗談も言い合える心の盟友の域に達してる関係性が明確に見えて、めっちゃ良い。彼女のリアクションがあるからこそ、王とのやりとりがめっちゃコント的でメリハリつく。

併せて、男に言い寄られるのも慣れてるし、のらりくらりとかわせる感じも、彼女の「シャムの子供たち、妻たち、そして王を本気で思いやり寄り添う教師であり親友」な役柄を浮き彫りに出来てて気持ち良い。

そこが出来上がってるからこそ、shall we dance?の”Come.”のシーンで、一度も意識したことなかった王の中の男を垣間見てちょっとドキッとしたのが分かって、なお楽しい。かつ、その後に熱に浮かされかけた王に対して、彼女は流されないで、ちゃんと「これからも対等な仕事仲間で親友でいましょう」を彼女から無言で示せて、王が”good.”「それで良い」と理解を示したのも素敵。私、若い頃は「王様と私」より「アンナと王様」の恋愛路線が好きだった人間なんだけど、一通り恋愛フェーズやったからか、今となってはこの感じの方が好きだわ!

あと皇太子と年が離れてるのに何故かアンナの息子が仲良くなってるの、地味に好き。次期国王として崇められ線引きされちゃう兄弟姉妹よりも、別世界の人間である英国人の坊やの方が、腹を割って話せたのかな、、とか考えると愛おしい。

時折、途中のシャム版アンクル・トムの小屋長くて飽きたりもしたけど、基本ケリーオハラと渡辺謙の掛け合いが楽しすぎたし、最後の最後にアンナがベッドに頭と手をかけてうつむくシーンに感じ入りながら観終わりました。。ここでも、そこでの第一夫人の様子との対比で、2人ともまごうことなく王の死を心から悼んでるし悲しんでるけど、気持ちと関係の在り方の違いが明確に表れていて、素晴らしい締め方だったと思いマス。。
Qちゃん

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