天豆てんまめ

“隠れビッチ”やってました。の天豆てんまめのレビュー・感想・評価

3.8
なかなか面白かった!

恋愛映画でもあるけど、幼少時に父親からDVを受けた女子のトラウマとそれが異性関係に及ぼす影響を交え、コミカルからシリアス、そしてヒューマンへと流れる。

何といっても、見た目清楚で思わせぶりに男を翻弄して告られて承認欲求を満たす「隠れビッチ」のひろみを演じた佐久間由衣の感情をさらけ出した演技が素晴らしい。ルームメイトでゲイの村上虹郎も癒し雰囲気がいい。同じくルームメイト役の大後寿々花はあのチャン・ツィー主演の「SAYURI」の少女役で印象的だったけど全然変わってて気づかなかった。

百戦錬磨の告られ道の最中、ちょい惚れしたイケメンに二股かけられ、焼け酒飲んで、公園に寝転がり「私の趣味は鼻をほじること!」ぶえ~っ!って、どろどろぼろぼろ面白い。そのなりふり構わないさらけ出し傍若無人ぶりを違和感なくみせた佐久間由衣の演技が見飽きない。

彼女は黒目が大きくて、あの子犬のような瞳できょとんとした、或いはうるうる🥺した目つきでみられたら、大抵の男は落ちるのではないでしょうか 笑

そして、彼女の本性を知った上で好きになってくれた森山未來との付き合いが始まった後の展開は、恋愛というよりも、人間としてどう自分の内面の拭いされない痛みと向き合うかというテーマになっていて、「自分を丸ごと」愛してくれたからこそ、「愛してくれないと許せない」暴走が加速する。この時の森山未來が可哀相で可哀想で……笑

そんな彼が彼女に距離を置こうと言って、彼女が過去と向き合い、どういう結論になるか、なかなか一筋縄ではいかないものを見せてくれた。

映画というのは大抵2時間だ。
2時間で登場人物の人生を見せる。

でもその2時間の前にも後にも人生はある。
この映画はそう生半可ではないことの余韻も見せてくれる。

自分の内面の痛み、澱みを解消することは生易しいことじゃない。
幼少期の両親の影響は計り知れないほどに大きい。
それは恋愛だけにとどまらず、結婚、長く続く人生に深く影響を及ぼす。

共に生きていくこと。

その前に自分と向き合うこと。

大切なテーマに手を差し伸べた映画だ。