てっぺい

イン・ザ・ハイツのてっぺいのレビュー・感想・評価

イン・ザ・ハイツ(2021年製作の映画)
3.5
【スペアリブ映画】
150分延々と歌い踊り続けるミュージカルの徹底ぶり。群舞から変重力まで、バラエティに飛んだダンスで否応なしに気分がアガる。移民問題という映画の骨をそんな霜降り歌舞お肉で包む、スペアリブのような映画。
◆トリビア
○ミュージカルで作詞作曲、主演を務め、本作をプロデュースしたリン・マヌエル・ミランダが、かき氷屋としてカメオ出演している。(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/07/post-96807.php)
○壁を駆け上がるダンスシーンは「雨に唄えば」「恋愛準決勝戦」のオマージュ。(https://theriver.jp/in-the-heights-wall-scene/)
○ 稼働したダンサー・エキストラは500人以上。(https://www.oricon.co.jp/news/2196821/full/)
○本作の映画化は2度頓挫した。(https://www.cinematoday.jp/news/N0125113)
◆概要
トニー賞4冠とグラミー賞最優秀ミュージカルアルバム賞を受賞した同名ブロードウェイミュージカル映画化作品。
監督:「クレイジー・リッチ」ジョン・M・チュウ
出演:「アリー スター誕生」アンソニー・ラモス、「ストレイト・アウタ・コンプトン」コーリー・ホーキンズ
◆ストーリー
変わりゆくニューヨークの片隅に取り残された街ワシントンハイツ。そこで育った4人の若者たちは、それぞれ厳しい現実に直面しながらも夢を追っていた。真夏に起きた大停電の夜、彼ら4人の運命は大きく動き出す。

◆以下ネタバレレビュー

◆歌踊
クラブで喧嘩して別れるのも、仲直りするのも歌いながら。これだけ切り取ると絶対に感情移入出来ないけど、終始歌とダンスで表現しているからそれが入ってくる不思議。停電したハイツで夏バテしている住民達を歌で一気に盛り返した美容室のママのように、150分も歌踊を徹底されれば観る側も勝手に元気に、そしてその世界観にハマる不思議さがある。あとなんというか、実在するあの街で、なんでも歌って踊れば幸せさ的な、ラテンのノリも全面に出ていた気がする。歌いながら勝手にバスに乗降するかき氷屋には何気に笑ったw
◆映像美
プールでヴァネッサを中心に円上で歌い踊る群舞。色んな肌の色に、水着の色もカラフルで、目にも耳にもいいこの映画ピカイチのアガるシーンだった。ベニーとニーナがビルの壁で舞う変重力ダンスは、きちんとビルの中からの映像も作り込んでいて(口が開きっぱなしの少年には笑ったw)、よりあの重力の向きが変わる不思議さに酔いしれた。あと美のくくりで言うと、ヴァネッサ役のメリッサ・バレラの美しい事。ドレスアップがスタイル抜群すぎて映画が入ってこなかった笑。
◆ホーム
自分のホーム(故郷)を求め続けるアスナビ。大学での差別に傷つき、でもなおチャレンジする決意をするニーナ。不法移民の永住権を模索するソニーも含め、ワシントンハイツの皆が抱える自分の“ホーム”の問題。“死んだら故郷に埋めてくれ”の歌詞にもあったように、実在するこの街で暮らす多くの移民たちが、実際に抱えている差別や偏見、貧困の問題を表現しているのだと確信する。本作は、歌えや踊れやの考えるな感じろ映画に一見見えるが、この街に住むというミュージカル原作者のリンが描く、ジャーナリズム的要素が根底にある骨太作品だと自分は思う。
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