ちゃんゆい

ある船頭の話のちゃんゆいのレビュー・感想・評価

ある船頭の話(2019年製作の映画)
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映像が繊細。日本の川と隣接する山々、木々、木造の小屋の中、差し込む光に照らされる着物の布地まではっきり見える。触れるようにその感触が伝わる。
映像監督はクリストファードイル。

ピアノで始まる音楽も良い。川の流れや自然の姿とマッチしてる。

日本人の四季を静かに認める繊細さが、ピアノ音楽と静かに水面を見つめる映像に投影されている。

現代のタクシードライバーのように、目的地まで運ぶことを仕事とする船頭トイチ。
トイチはお客たちの話を聞いていないようで聞いている。
間も無く橋ができることを話す村人たちの言葉に、トイチは無関心のように振る舞うが、心の中には村人を刺し回りたいほどの不安と恐怖を抱えていた。

あまり自分の言葉で語らないトイチの物語を『ある船頭の話』とするタイトルが良かった。

トイチの柄本明さん、すごい。
ずば抜けて「生きてる」と思った。
視線と腹から出る言葉と。演者それぞれが役を生きてる量の違いがあった感じがする。

白い布を被った少年(川の怨霊?)の登場シーンは毎回なんだか納得がいかなかった。言葉が聞こえない方がよかったのでは。全体を通して、行間を読むような演出だったから、直接「俺は怨霊だ」みたいな言葉が聞こえたのはあまり納得がいかない。

エンドロールの、雪の積もる山の間の雄大な川を下る舟がゆっくり確実に進んでいてうわ〜良いなあと思った。ふうとトイチの表情が見えるようだった。彼らの決心が見える。