朝田

ドミノ 復讐の咆哮の朝田のレビュー・感想・評価

ドミノ 復讐の咆哮(2019年製作の映画)
3.8
完全に破綻している脚本をスローモーションが炸裂する過剰なカメラワークと、ピノ・ドナッジオの過剰にドラマチックな音楽と共に描く、まさしく純度100パーセントの「デ・パルマ映画」。アクションムービーや、クライムムービーと呼ぶよりも、「デ・パルマ映画」と呼ぶのが相応しい。突っ込み所を指摘するのが愚かしく感じられるほど脱力してしまうような展開が続くし、作品としてはあまりに粗野だが、今のアメリカ映画が失ってしまったような怪しい雰囲気と興奮に満ちている。終盤のあまりに地味な見せ場で多用されるスローモーション。カメラがゆっくりと下に移動し、血の付着した足元を捉えたショットに移行した瞬間に鳴り響くヒッチコック感満載な不穏でムーディーなスコア。USBメモリや、切断された指にこれ見よがしにズームするカメラワーク。もう全てがどうしようもなくデ・パルマ的なシークエンスとしか言いようがない。考えてみればここまで頼まれ仕事のような映画であっても滲み出ずにはいられない強い作家性を感じさせるのはやはり凄い。そんな監督など最近は中々いない。そういう意味で貴重な作品だと言えるし、デ・パルマをこよなく愛している自分としては大満足の作品だった。デ・パルマのフィルモグラフィーで言うと「ボディ・ダブル」や「愛のメモリー」、「パッション」のような踏み絵的な役割を担っていくであろう劇薬。ただ流石に俳優陣が揃いも揃って華が無さすぎるのは苦笑いするしかなかったが。
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