リッキー

ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜のリッキーのレビュー・感想・評価

4.2
987本目。190325
『人種分離法』
これは人種差別をテーマにした様々な映画では、よく耳にするワードです。
この法令により、学校、飲食店、バス、水飲み場などが白人用と有色人種用とに分けられ、違反すると逮捕されるようになりました。

舞台は1960年代、人種差別が最も激しかったとされているミシシッピー州です。アメリカ南部のこの地では、かつて奴隷制度の中心地であったという歴史的背景もあり、黒人の割合が他州よりも多かったため、差別が根強く浸透していた地域です。

主人公のスキーター(エマ・ストーン)は大学を卒業しライターを目指して地元に戻ってきます。地元の友人たちは既に皆結婚·出産をし、家事や育児を黒人メイドたちに任せて生活しています。
彼女はメイドに対する友達の差別的な考え方や熊度に嫌悪感を抱き、 さらに実家でも永いこと仕えていた母親代わりであったメイドが急に解雇されていたことに不信感を募らせ、メイドたちの置かれている厳しい現実を世間に認知させるために、彼女らの証言を元に本を出版しようとします。

本作ではメイドを取り上げていることから、公共の場での差別シーンはあまりなく、日常の、家庭内での何気ない言葉から生まれる差別が多く描かれています。特に雇い主が意地悪なわけでもなく、皆が彼女たちの差別的な待遇を当たり前だと思っていることから、単に彼女たちの心が麻痺しているだけのように思えます。

その中で私にはよく理解できないシーンがありました。自宅のトイレだけを家族用とメイド用に区务けしています。きっちり分けて衛生を保っているという理屈ですが、そもそも黒人が不衛生であれば、家族の食事を作ってもらい、愛する子どもの育児も密に接触させている状態を、雇い主はどのように解釈しているのでしょうか。
主人公がメイド達を取材する中、雇用主の不満ばかりではなく、心温まるエピソードもありました。あるメイドは雇い主の家に行くために農場を通って近道をしようとしたところ、その農場主から今度見つけたら射殺すると脅されたそうです。それを聞いた雇い主が近道する農場を買い取ってくれたという証言があったり、主人公の友人宅のようにメイドに対してすべての面で尊重してくれて、 メイドと雇い主が同じ食卓で食事をしたりするような良好な関係もあることから、少し救われた感がありました。

この作品は人種差別がメインのお話ですが、女性差別もしっかり扱っています。
女性のシンデレラストーリーは早くに良いパートナーと出会い、結婚して子供を産むことだと決めつけられており、よって主人公のように大学を卒業して職探しをしている行為自体受け入れられていません。
作品中にもありましたが、やっと相性の良い彼氏との出会いがあっても、その彼氏から傲慢なことを言われるシーンも当時は当たり前の考え方であったことでしょう。

タイトルの「HELP」ですが、差別から「助けて!」という意味ではなく、「手伝いますよ」という意味で、彼女たちメイドも誇りを持って仕事をしていることを訴えたかったことがわかりました。
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